旅・いろいろ地球人
父親
- (7)がんばるお母さん 2015年1月8日刊行
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鈴木紀(国立民族学博物館准教授)
農村開発のワークショップに参加する女性たち=メキシコ・チアパス州で2010年8月、筆者撮影「アキ・イ・アヤ」(スペイン語で「こっちとあっち」の意)はアメリカで働くペドロが故郷のメキシコで過ごす日々を描いた映画だ。2012年の東京国際映画祭に出品され、昨年8月、国立民族学博物館の映画会「みんぱくワールドシネマ」でも上映した。
ペドロの2人の娘は、数年ぶりに帰宅した父に馴染(なじ)めない。とくに思春期の長女ロレーナは自分の気持ちすらうまく整理できず、父を遠ざける。一方ペドロには夢があった。仲間とバンドを組むことだ。しかしバンドの収入は少なく、妻の病気で家計は火の車。再びアメリカを目指すことになる。自分たちを養うために夢半ばで旅立つ父を見て、娘たちは心を開く。だが、こうして父への尊敬が芽生えた時、皮肉にも父はまた遠い存在になった。
現在、メキシコの人口の1割はアメリカ在住といわれる。ペドロのような家族は珍しくないはずだ。映画は家族の切なさを伝えるが、はたして現実はどうだろうか。メキシコで農村開発の研究をしていると、元気な女性の夫がアメリカ在住という事例に出くわす。夫の仕送りで暮らしが安定するうえ、夫に気兼ねなく家の外で存分に活動できるからだ。がんばる父とがんばる母。離れ離れでも、家族の絆はこういうところに表れる。
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