旅・いろいろ地球人
驚く
- (4)遅れてきた手紙 2015年4月9日刊行
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三島禎子(国立民族学博物館准教授)
留学先のセネガル国立応用経済学院=1989年、筆者撮影「驚く」というのは、思いがけないことにびっくりして、慌てたり、呆(あき)れたり、あるいは動揺したり、恐怖を感じたりする感情である。異国での体験には実際驚くことばかりで、そこから異文化の受容が始まるといってよいだろう。
しかし実際は、侮られまいとする気持ちから、驚いた感情を見せまいと、平常心を装うことが多い。また文化の違いが大前提になっているゆえに、そこにあるはずの驚きを勝手に差し引いてしまうこともある。
さて、私個人の驚きは、じんわり後から来ることが多い。セネガルに留学したときもそうだった。
入学に際して、高額の登録料を払えと言われ、途方に暮れていたところ、知人がセネガルの文部大臣に奨学金の要請をしたらいいと勧めてくれた。そんなことがまかり通るのだろうかと思ったが、何度か拙(つたな)いフランス語を駆使して嘆願書を大臣宛てにしたためた。以前、日本から送った書類が、大学事務局では届いていないと言われたこともあるので、私の手紙が大臣に届くことには、あまり期待していなかった。
はたして、新学期が始まる直前に、大臣から手紙が届いた。日本大使館を通じて、私を正式な国費留学生とするという旨の文書が届いたのだった。人生最大の驚きであった。
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