旅・いろいろ地球人
踊る
- (2)病気治しのダンス 2015年5月21日刊行
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池谷和信(国立民族学博物館教授)
村で著名なダンサー兼ドクター=ボツワナのカラハリ砂漠で2000年、筆者撮影女性たちが、たき火のまわりの砂の上にひざまずき、みなで手拍子をうちながら声をあげる。その周囲をはだしで踊りながらまわる一人の男性。この男性のようすがどうもおかしい。ばったりと倒れることもある。
これが、アフリカのカラハリ砂漠のサンのなかでよく知られたトランスダンスだ。男性はトランス状態に入り、一人の女性のもとに近づいた。彼女は、ここのところ胸に痛みを感じているという。踊り手は、彼女の痛みの部分に手をそえた。
その後、この男性は、村に住む伝統的な「ドクター」であることがわかった。彼は、トランスによって普通の人間とは異なる力を持つことができ、病気を治すことができると信じている。
近年、この踊りにも変化がみられる。かつて、男性にしか許されなかったが、今は女性の踊り手もいる。政府による自然公園の外への移住後には、心の苦しみのためか、翌朝までこの踊りが続くこともある。最近では、この踊りが内外で有名になったことで、世界から人が集まるエキスポ(博覧会)の行事でも披露されるようになっている。
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