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踊る
- (5)交流の輪 2015年6月11日刊行
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齋藤玲子(国立民族学博物館助教)
白糠(しらぬか)アイヌ文化保存会による踊りに見入る観客たち=三重県松阪市で2月22日、筆者撮影関西でアイヌ文化に触れられる場はさほど多くない。アイヌの人たちと直接交流する機会はさらに限られるだろう。国立民族学博物館では、それまで休館日に行われてきた儀式「カムイノミ」を2007年から一般公開するようになった。
しかし、そのずっと前から地域に定着してきたアイヌ文化に関する行事がある。三重県松阪市の「武四郎まつり」で、今年で20回を数えた。このまつりは、幕末から明治を生きた探検家で北海道の名付け親としても知られる松浦武四郎(1818-88年)の功績を称(たた)えるものだ。武四郎は蝦夷(えぞ)地と呼ばれた北海道でアイヌの協力を得ながら6回もの調査を敢行、詳細な地図をはじめアイヌ文化や動植物等について貴重な記録を残した。1994年に生家近くに記念館が開館して以来、彼が没した2月にまつりが開かれている。
まつりの目玉の一つが「アイヌ古式舞踊」で、毎年各地から踊り手を招聘(しょうへい)してきた。踊りが始まると大勢の人が集まり、その関心の高さに驚く。10ほどの演目の最後は観客もステージにあがり、輪踊りで盛り上がった。実は前日にアイヌ文化体験交流会があり、市民らが踊りを楽しんだ。アイヌ文化保存会の方たちもまつりを心待ちにしていたという。一緒に体を動かせる踊りは、交流にふさわしい出し物でもある。
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