旅・いろいろ地球人
肉食紀行
- (3)台湾素食で肉を味わう 2015年12月17日刊行
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野林厚志(国立民族学博物館教授)
紅色の酒粕(さけかす)を包んだ「肉」団子汁を出す食堂=台湾北部で2009年、筆者撮影台湾の街を歩くと時折、目にするのが素食という文字が書かれた看板である。なまじ漢字が読める日本人はつつましい食べ物などと解釈してしまうかもしれないが、素食とは肉を使わない料理、すなわちベジタリアン・フードのことである。
筆者の印象ではあるが、素食の店の看板は黄色や緑色をしていることが多く、野菜や果実を連想させてくれる。また、仏画に黄色や黄金色がよく使われていることも影響しているのかもしれない。素食の店の看板には「卍」の記号が付されていることも多く、大乗仏教の信仰と食生活が結びついていることがわかる。
台湾の素食は厳しい場合だと、牛や豚、鳥、魚介類はもちろんのこと、乳や卵に加えて、五葷(くん)と呼ばれるネギやニラ、ニンニクやラッキョウまでも食べることが禁じられている。ただし、素食の店でも「肉」を楽しむことができる。大豆や落花生、小麦などを駆使した、見た目は肉料理とほぼ変わらない素肉料理が作られている。味にも工夫がこらされ、昆布で出汁(でし)をしっかりとって、肉に近い味が追求されている。
菜食を志向するのに、なぜ、わざわざ肉に模したものを食べ(いや、食べさせ)ようとするのだろうか。肉に出会った人間の性(さが)なのかもしれない。
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