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文化財を守る
- (2)海外若手研究者に学ぶ 2016年4月14日刊行
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日高真吾(国立民族学博物館准教授)
GEM-CCでのワークショップ。その向上心にはすがすがしいものがある。=2010年10月、和高智美さん撮影大エジプト博物館保存修復センター(GEM-CC)は、ツタンカーメンのコレクションをはじめとするエジプト文明の秘宝を修復し、収蔵する使命を担っている。筆者は、これまで5年にわたり、GEM-CCの若手修復家の人材育成に協力してきた。
さまざま形状や状態の遺物を数多く収蔵するGEM-CCにおいては、大量の民族学資料を収蔵している国立民族学博物館(民博)の収蔵技術が参考になると考えた。そこで、民博の収蔵技術を応用して、遺物の形状や状態に応じた収納箱の製作技術を指導した。
講義のなかで、実習生は次々に収納箱のデザインのアイデアをだしてくる。ただ、もう少し技術を習得してからそのようなアイデアを考えて欲しいと思いつつも、ふと感じたことがあった。文化財の保存修復技術は、反復練習を繰り返すことではじめて身につけることができる。しかし、その技術は、文化財それぞれの状態に適したものでなければ、まったく意味をなさない。そこには技術習得とともに、その技術をどのように応用するかのアイデアが求められるのである。
自らの考えをまとめ、それを他人に伝えようとする彼らの態度は、自ら学び、自ら考えるという、技術を習得する上で、最も大事なことを教えてくれた。
シリーズの他のコラムを読む
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- (4)保存修復の現場から