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異形・異相の訪問者

(4)魔を払い福をもたらす鬼  2017年6月29日刊行
笹原亮二(国立民族学博物館教授)

佐渡島の鬼太鼓=新潟県佐渡市で2017年、筆者撮影

鬼と聞くと桃太郎の昔話や節分が想起され、悪者のイメージを抱きがちである。しかし、日本列島各地の祭りや年中行事に現れる鬼を見ていくと、鬼が悪者とばかりもいえなくなる。

愛知・長野・静岡の県境の各地で年末から年頭に行われる「花祭」の鬼は、人々に授ける福を携えて山から下りてくるとされる。大分県国東(くにさき)半島で旧正月に催される「修正鬼会(おにえ)」では、仏や高僧の化身で魔を払い福をもたらす鬼が現れる。

新潟県佐渡島でも、各地の春秋の祭には、鬼が舞いながら太鼓を叩(たた)いて家々を巡る「鬼太鼓」が演じられる。鬼は家々の豊作や豊漁や家内安全を祈願し、魔を払う。悪者の獅子とともに現れ、獅子を退治するところもある。島内には100組を超える鬼太鼓の組がある。鬼は島の人々にとって、祭りの晴れがましい気分に欠かせない存在である。

鬼は異形・異相で見るからに恐ろしい。だから、悪者で退治されて当然だ。そんなシンプルな理解は一見どんな鬼にも当てはまりそうで分かりやすく思われる。しかし、そうした理解が十分でないのは各地の鬼の様相を見れば明らかである。

怖さと親しさがない交ぜになった各地の鬼の姿は、不合理に満ちて物事が単純には割り切れない世間の現実を映し出しているとするのは考えすぎだろうか。

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