旅・いろいろ地球人
パレオアジア文化史
- (4)魂と通じる道具 2018年4月28日刊行
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野林厚志(国立民族学博物館教授)
特別展「太陽の塔からみんぱくへ」展示資料より、ニューギニアのヤムイモにつけられる仮面=筆者撮影
ネアンデルタール人が死者を埋葬したことは考古学者の間でもほぼ意見の一致を見ている。ほぼ同じ時期に死んだ動物骨とくらべて化石人骨のかく乱が少ない遺跡の存在がその根拠とされている。
一方で、信仰の存在までには議論が及ばない。これは、埋葬は他者の死に対するものであり、埋葬する側が、自己の死を意識しているか否かは、埋葬だけでは判断できないからである。その意味において、信仰の有無は旧人と新人とを区別する一つの要素なのかもしれない。
信仰を生み出す要因の一つは、死ぬとどうなるのかという不安な疑問だろう。「自分たちはなにもので、どこからきて、どこにむかうのか」という問いの三つ目に答えるための思考は、個体の生物としての死に関わらず、魂は存在するという想像力を人間に持たせることになる。そして、魂は人間だけではなく、森羅万象に宿るというアニミズムという考え方にもつながっていく。
目にみえない魂の存在を表現し確認するために、人間はいろいろな手立てを講じていく。神話を語り継いだり、魂と自分たちとが通じ合ったりするための道具として仮面や神像を作る。神秘的でもあり身近でもある仮面と神像は人間性の核心を表しているのかもしれない。
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