国立民族学博物館(みんぱく)は、博物館をもった文化人類学・民族学の研究所です。

旅・いろいろ地球人

バザールの風景

(1)人やモノが集まる場所  2018年6月9日刊行

寺村裕史(国立民族学博物館准教授)


平たいパン「ノン」が売られるバザールの一角=2014年9月、ウズベキスタン・サマルカンドで筆者撮影

ウズベキスタンのサマルカンドは、古くから人とモノが行き交うシルクロードのオアシス都市として著名な街である。

4~7世紀ごろには、商才と工芸技術に長けたソグド人がシルクロードを往来しながら東西・南北の交易に活躍し、14~15世紀にはティムール帝国の首都として繁栄するなど、多くの人やモノ、そして情報が集まる場所であった。現代においては、2001年に「サマルカンド―文化交差路」としてユネスコの世界文化遺産に登録されている。

そのような場所の象徴として、バザールが挙げられるだろう。バザールは「市場」を意味するペルシア語であるが、中央アジアや西アジアのイスラム世界において、定期市と、常設店舗の連なる市場の両方を指す。

似たような商品を扱う店が区画ごとに集まり、食料品から衣料品・日用雑貨など、さまざまな種類の品物が売買される。日本との一番大きな違いは、値札が無く、基本的に売り手と買い手の交渉によって商品の「値段」が決まることであろう。

バザールのあちこちから、値段交渉や情報交換のための大きな話し声が聞こえてくる。そうした独特の喧騒は、その街や地域の元気さを示す一種のバロメーターなのかもしれない。

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