国立民族学博物館(みんぱく)は、博物館をもった文化人類学・民族学の研究所です。

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中国の食

(3)庶民の心身いやす菓子  2018年7月21日刊行

韓敏(国立民族学博物館教授)


冬に欠かせない人気のおやつ、フルーツあめの糖葫芦=中国・成都で2003年12月、筆者撮影

糖葫芦(タンフールー)は中国北方起源の伝統的な冬のおやつで、サンザシなどの果実を竹の串に刺し、溶かした砂糖でコーティングしたあめである。表面はパリパリしていて、一口食べるとほどよい甘酸っぱい食感が口の中に広がる。

サンザシは深紅色の小さいリンゴのような果実で、健胃や整腸に良いといわれ、漢方としても利用されてきた。清の時代の北京在住の潘榮陛(はんえいへい)が著した『帝京歳時紀勝』の中では、北京の劇場や路上で売られている糖葫芦が美容や疲労解消に効くと記述されている。

北方起源のお菓子だが、いまは中国のどこでも手に入る。スーパーでも売っているが、主流は屋台での販売である。1串およそ2~3元(約30~50円)の安さである。あんこを入れたり、クルミを挟んだり、工夫を凝らしている店も多い。また、サンザシのほかに、イチゴ、ミカン、バナナ、パイナップル、ブドウ、キウイなどの果物のほか、プチトマトや山芋のような野菜を使う場合もある。客が好きな果物を組み合わせ、オーダーメードで作ってくれる屋台もある。

カラフルで、キラキラした糖葫芦は冬の街を潤わせ、その調和した甘酸っぱい食感は、庶民の心身をいやしてくれる人気のお菓子である。

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