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旅・いろいろ地球人

エジプト映画の今

(4)若者2人とヤギの旅  2018年9月1日刊行

相島葉月(国立民族学博物館准教授)


映画「ヤギのアリーとイブラヒム」でアレキサンドリアを散策するアリー(左)とイブラヒム=Loco Films提供

エジプトは29歳以下が人口の60%を占める若者の国である。彼らの悩みは就職と結婚。新進気鋭の映画監督シェリーフ・エル=ベンダーリーは、2017年に本国で公開された『ヤギのアリーとイブラヒム(原題アリー・マアザ・ワ・イブラーヒーム)』を通して、非常を日常として生きるエジプトの若者の現実をビビットに描いている。

カイロの下町に暮らす、白く美しい子ヤギを「婚約者のナダ」と呼ぶアリーと、耳鳴りに悩む天才ミュージシャンのイブラヒム。この2人の青年は呪術師の診療所で出会い、「エジプトの三つの水域に小石を投げれば呪いが解ける」との助言に従い、カイロからアレキサンドリア、シナイ半島へと子ヤギを連れて旅に出る。

本作の魅力はオーディションで300頭の子ヤギの中から選ばれたナダの「メー(名)演技」である。彼女の自発的な動作を生かすために、監督はシーンごとにシナリオや俳優陣、カメラワークを適宜調整したという。エジプト映画の製作費は欧米や日本と比べてかなり小額であるため、CGの使用は最小限に抑え、国内各地でロケを行った。

本作でどこまでも広がる青い空と海をみたら、エジプトに旅立ちたくなる方も多いだろう。

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