国立民族学博物館(みんぱく)は、博物館をもった文化人類学・民族学の研究所です。

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工芸継承

(4)成形合板  2018年9月29日刊行

日高真吾(国立民族学博物館准教授)


2016年度グッドデザイン賞を受賞した卓球台「インフィニティー」=三英提供

2016年のリオデジャネイロ五輪では、日本代表の卓球チームの活躍が大変な話題となった。同時に、Xの形状の脚部に木材が用いられた躍動感あふれるデザインの卓球台「インフィニティー」が大きな注目を集めた。製作したのは千葉県の卓球台メーカー「三英」で、16年度のグッドデザイン賞を受賞している。デザインは、ソニーでウォークマンなどを手がけた澄川伸一氏。そして脚部の製作には、山形県の家具メーカー「天童木工」が加わった。この脚部に用いられているのが、商工省工芸指導所が開発した成形合板技術なのである。

成形合板技術は、戦時中、木製飛行機開発のために研究が進められた。木目の縦目と横目を交互に貼りあわせることで、木の膨張収縮が安定し、天然木以上の強度を持つ合板を生み出した。

なお、「インフィニティー」は、東日本大震災の被災地への思いや復興への願いを込めて、岩手県宮古市のブナ材が用いられた。また、ブラジルのイメージカラーも取り入れつつ、「新しい生命」という東北へのメッセージを込めた色「レジュブルー(青い瞳)」が開発され、天板の色として採用されている。

世界が認めたメード・イン・ジャパンの卓球台。ここにも工芸指導所の足跡を感じることができる。

シリーズの他のコラムを読む
(1)「商工省工芸指導所」
(2)「玉虫塗」
(3)「非円形ろくろ」
(4)「成形合板」