国立民族学博物館(みんぱく)は、博物館をもった文化人類学・民族学の研究所です。

旅・いろいろ地球人

ドイツの保育園

(2)多文化教育  2019年1月12日刊行

森明子(国立民族学博物館教授)


コムシュ保育園の様子=ベルリンで2010年9月、筆者撮影

さまざまな文化が出会うベルリンで、多文化教育は重要なテーマである。コムシュ(トルコ語で「隣人」を意味する)保育園は、ドイツ語文化とトルコ語文化を等しく学ぶ多文化教育を早くから掲げてきた。どの子どももドイツ語とトルコ語の双方を使いこなす。どのように教えているのか聞いてみた。

一つのグループは16人ないし12人で、ドイツ語家庭の子どもが5割強になるように編成する。保育士は2人で、ドイツ語を母語とする保育士とトルコ語を母語とする保育士が組になる。グループの日常活動は、ドイツ語とトルコ語のバイリンガルである。

保育園では、キリスト教の行事(謝肉祭、復活祭、聖マルティンの提灯行列、クリスマス)とイスラム教の行事(砂糖祭、犠牲祭、イラン暦正月)のすべてを、全員でともに祝う。友達の文化を友達とともに経験することを通して、自分の文化も友達の文化も大切に思うようになる。食事は野菜主体で豚肉は供さない。水泳や体操をさせないという親にはお引取り願う。

二つの文化を知り、思うことを二つのことばで表現できることは、子どもの世界を2倍にも3倍にも広く豊かにする。ドイツ人家庭からも、トルコ人家庭からも、入園希望者が絶えない。

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