旅・いろいろ地球人
南太平洋に住む客家
- (5)ニューカレドニアの「客家文化」 2020年2月29日刊行
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河合洋尚(国立民族学博物館准教授)
タヒチの客家が持ち込んだマア・ティニト(MAA TINOTO)。フォークで食べる。2019年9月、筆者撮影
ニューカレドニアでは、ベトナム文化と中国文化の境が曖昧である。
ヌーメアで客家が経営する大きな雑貨店に入ってみた。ニューカレドニアでは珍しく中国風の装飾品や祖先祭祀用品が売られている。だが、これらを購入するのは、中国系移民だけでない。ベトナム系移民もそれらを購入し、使用するのだという。
食文化も同様である。ヌーメアの中国料理店に入ってメニューを見ると、必ずと言っていいほど、フォーやネムなどのベトナム料理がそれに含まれている。逆に、ベトナム料理店のメニューに、中国由来の料理が記載されることも珍しくない。
他方で、ニューカレドニアの中国系移民の間では、タヒチの客家が持ち込んだ文化も浸透している。マア・ティニトはその一例である。このタヒチ語を直訳すれば「中国料理」である。パスタのうえに豚肉、小豆などがかけてある。その名に反して中国で見かけることはまずない。
2000年代に入ってから広東省より移住したFさんは、ヌーメアで中国料理店を開いた。客家である彼は、故郷の広東省で「本場の味」とされている客家料理を、当地で出した。だが、その客家料理は、地元の客家にすら受け入れられなかった。ニューカレドニアの客家は、多種多様に混じりあった文化を、すでに受け入れていたのである。
シリーズの他のコラムを読む
- (1)客家の故郷・中国広東省
- (2)タヒチの春節と元宵節
- (3)タヒチ客家の「中国人」意識
- (4)ニューカレドニアへの再移住
- (5)ニューカレドニアの「客家文化」