国立民族学博物館(みんぱく)は、博物館をもった文化人類学・民族学の研究所です。

旅・いろいろ地球人

変化するイタリアの食

(1)グローバル化の波  2020年12月5日刊行

宇田川妙子(国立民族学博物館教授)


住宅地にあるマクドナルドの店。街の景観保護のため地味な外観になっている=ローマで2018年、筆者撮影

イタリアは食に関して保守的だといわれる。1986年にローマのスペイン階段横にマクドナルドが出店した際、抗議運動が起き、それがスローフード運動の契機になったことはよく知られている。イタリアは今でも愛郷精神が強い。グローバル化のなか、各地に根付く伝統的な料理を守り、経済的な意味でも地産地消を進めて地域振興につなげていこうとする動きは広く見られる。

ただし、グローバル化の波が滞っているわけではない。たとえばマクドナルドは当初、外国人観光客しか入らないと言われていた。しかし今では少しずつ浸透しており、繁華街を外れた場所でも急にマクドナルドの店に出くわすことは多い。なかを覗くと、子どもや若者、家族連れで、しばしば賑わっている。子どもの誕生日パーティなどは、家で開くよりも面倒がないという。

この変化には、メニューをイタリア風に変えたりした店側の努力もあるが、人びとの側の生活習慣や好みの変化も関わっている。そして2年前には、スターバックスもミラノに1号店を開いた。スターバックスは、イタリアのコーヒー文化の影響を受けてアメリカで生まれたものだが、それがいわば逆輸入されたのである。これらが今後、彼らの伝統的な味や料理に本格的な影響を与えるのか否か、展開が楽しみである。

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