旅・いろいろ地球人
音の響き
- (1)エチオピアの門付 2013年6月27日刊行
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川瀬慈(国立民族学博物館助教)
ラリベロッチの夫妻=エチオピアで、筆者撮影「我々は神のはからいにより再会した/ 死が我々を訣(わか)たない限り/このようにまた会うことができる/大地は無慈悲だ/あなたが死ねば体を腐らせる/その前に「ほらどうぞ」と言って/恵んでくれ/恵むのか/恵まないのか/出産が間近な妊婦のように/私を待たせないでくれ」
地を這(は)う呪文のような男の唄に、甲高く伸びやかな女の唄がビブラートをところどころに刻みつつ、時に重なり、離れながら薄明の高原の冷気に溶けて広がる。ラリベロッチの登場である。ラリベロッチはエチオピア北部に点在する村を拠点に、1年の大半を旅に費やし、早朝に家の軒先で歌って人々に祝福の言葉を与え、その対価として、金銭、衣服、食物等を受け取る。
ラリベロッチは、こうした活動をやめるとハンセン病に侵されるという信仰を持っていたため、病への恐れから先祖代々音楽の旅を継承してきた、と人々に信じられてきた。ただし、この信仰に対しては、当事者のあいだでも意見や立場はさまざまである。
ラリベロッチの活動は、一見すると、瞽女(ごぜ)や春駒など、わが国の門付(かどづけ)芸能者を思い起こさせるが、さらにハンセン病をめぐる言説は、ラリベロッチをミステリアスな芸能者として、際立たせている。
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