国立民族学博物館(みんぱく)は、博物館をもった文化人類学・民族学の研究所です。

研究テーマ・トピックス|杉本良男

南アジアの宗教・文化的ナショナリズム(1)

 

南アジアの宗教・文化は深くナショナリズムと関わっている。スリランカでは、仏教ナショナリズムがつよく、独立後はタミル・ヒンドゥー教徒との間の抗争をうむ原因にもなった。一方、南インドの芸能とくに娯楽映画は、政治と深く関係している。とくに、比較的下層の人びとを政治的に動員するために、映画が重要なメディアとしてもちいられた。ここ30年あまり、歴代の州首相には、映画スターであったり脚本家であったり、なんらかのかたちで映画に関わった人が就任している。現在は、南インドにおける娯楽とナショナリズムとの関係について、少年芝居一座から政治的娯楽映画、地方ナショナリズムへの展開を追い、また近年の情報、メディアの急速な変化のもとでの視聴覚メディアの意義についての研究を行っている。

 
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タミル映画の立て看板とポスター(南インド、タミルナードゥ州)、タミル映画の宣伝には、大きな立て看板やポスターがつかわれる。街角のいたるところで見ることができるが、インド映画の中心地ボンベイ(ムンバイ)などではあまり巨大な看板はみられない。


ガネーシュ生誕祭のためにとくにつくられたガネーシュ像(西インド、マハーラーシュトラ州)、毎年8月末にガネーシュ神の生誕を祝う祭礼が行われる。西インドのボンベイ(ムンバイ)、プネーなどでは、街角のいたるところにガネーシュなどの像がつくられる。家庭用に、粘土などでつくった像もうられている。こうした像は、生誕祭の最後に、川や海などに流される。