国立民族学博物館(みんぱく)は、博物館をもった文化人類学・民族学の研究所です。

イベント・ワークショップ

2015年5月27日(水)、6月3日(水)、6月10日(水)、6月14日(日)、6月26日(金)、7月1日(水)、7月8日(水)
連続講座「みんぱく×ナレッジキャピタル -世界の『民芸』-」

  • 開催日:2015年5月27日(水)、6月3日(水)、6月10日(水)、6月14日(日)、6月26日(金)、7月1日(水)、7月8日(水)
  • 時間: 19:00~20:30(開場18:30) ※6月14日の展示ツアーは13:30~15:00
  • 場所:CAFE Lab. グランフロント大阪北館ナレッジキャピタル1F アクセスマップ[PDF]
       国立民族学博物館 ※6月14日のみ
  • 定員:各回50名(6月14日は定員30名)中学生以上/要事前申込/先着順
  • 参加費:500円(1ドリンク代)
  • 主催:国立民族学博物館、一般社団法人ナレッジキャピタル、株式会社KMO
  • お問い合わせ:一般社団法人ナレッジキャピタル ナレッジキャピタルホームページ
            電話:06-6372-6530(営業時間10:00~17:00)/e-mail:info@kc-i.jp

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趣旨

柳宗悦を中心に展開された日本の民芸運動は、人びとの生活の中で用いられる器物に「健康な美」を見出し、そのような美を備えた器物を「民衆的工芸」の意味で「民芸」と名づけて、その保存と存続を図ろうとした運動でした。民芸運動はまた、地方で制作された器物を都市の生活者が自分の生活のなかに取り込むすべを提示しました。今回の講座では、視野を日本国内から世界に広げ、世界の人びとの手仕事とものづくりのなかに、生活に密着した美を探ります。そこからは、私たちの日常の生活を少し昨日までと違ったかたちにしてくれる、新しい暮らしの美のヒントが得られるかもしれません。

 

「民芸」という言葉は、正確には、柳らが展開した運動の中で取り上げられた器物を指すものです。ただ、今回の講座では、あえてその用語を世界各地の手仕事の中から生み出されてきた器物に広く当てはめ、世界の人びとのものづくりにこめられたこだわりや喜びに目を凝らすことにしました。みんぱくの7 人の研究者が、世界のいまの暮らしのなかの美に迫ります。

 

講座情報

第1回 5月27日(水) 民芸とインドのクラフト―ものを作り使う日常
            講師:金谷美和[国立民族学博物館・外来研究員]

会場:CAFE Lab. グランフロント大阪北館ナレッジキャピタル1F/定員:50名  お申し込みはこちら


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インド更紗の一種
「アジュラク」

民芸は、けっして骨董趣味だったわけではありません。むしろ、温故知新、古いものに学んで新しいものを作ろうという意識の高い動きだったといえます。当時の都会人にとって、地方の生活用品は、まさに異文化。現代日本の私たちにとって、インドのクラフトは、当時の人にとっての民芸です。手仕事のものを作り使うことが、まだ日常生活に息づいているインドから、民芸について考えてみましょう。

[img]「シリーズのねらい」吉田憲司[国立民族学博物館教授・副館長]
《講師プロフィール》
アフリカを中心とした儀礼や仮面の研究を進めるとともに、ミュージアム(博物館・美術館)における文化の表象のあり方を研究している。主な著書に『宗教の始原を求めて』、『文化の「発見」』(サントリー文芸賞)、編著書に『柳宗悦と民藝運動』など。

[img]《講師プロフィール》
専門は文化人類学。インドと日本で染織を中心とした手工芸と職人を研究している。著書に『布がつくる社会関係――インド絞り染め布とムスリム職人の民族誌』、『柳宗悦と民藝運動』(共著)などがある。

 
第2回 6月3日(水) インドの縫い目から―つくり手たちの知恵と工夫
            講師:上羽陽子[国立民族学博物館・准教授]

会場:CAFE Lab. グランフロント大阪北館ナレッジキャピタル1F/定員:50名  お申し込みはこちら


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使い古した端布を縫い合わせて敷き布団をつくる村落の女性

贅を尽くした職人による緻密で繊細な針目の布。ボロボロになっても捨てることのできない布をざくざくと縫い合わせる村の女性の針仕事。このようなインドのさまざまな縫い目から手仕事やものづくりについて一緒に考えてみましょう。職人ならではの洗練された創意工夫、母から娘へと継承される縫い仕事の知恵や工夫を刺しゅう布やアップリケ布などの実物とともに紹介します。

[img]《講師プロフィール》
専門は民族芸術学、染織研究。インドを中心に南アジアで手仕事の調査をおこなっている。著書に『インド、ラバーリー社会の染織と儀礼―ラクダとともに生きる人びと』、『インド染織の現場つくり手たちに学ぶ(フィールドワーク選書(12))』がある。

 
第3回 6月10日(水) ベトナム、黒タイの「竹の文化」
            講師:樫永真佐夫[国立民族学博物館・准教授]

会場:CAFE Lab. グランフロント大阪北館ナレッジキャピタル1F/定員:50名  お申し込みはこちら


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さて、この竹編みの大きな敷物は、なにに使うのでしょう?(ベトナム、ディエンビエン省、1999年)

竹を切り、割き、削って作った無数のモノに囲まれて、ベトナム西北部の村で黒タイの人々はくらしてきました。竹で米を作り、竹を負い、竹に飯をつめ、竹を食い、竹から飲み、竹に座り、竹に寝て、竹に尿たれ、竹を奏で、竹で遊ぶ。「竹の文化」と呼んでよさそうな、そんな黒タイのくらしと文化を、写真やエピソードをまじえてご紹介し、自給的な生活とは、手仕事のこれからとは、といった話題についても考えます。

[img]《講師プロフィール》
ベトナム西北部の盆地に水田を開き、村をつくっている黒タイという人たちが、どんなことを思いながらくらしているのかを、つらつら考えています。著書に『黒タイ歌謡「ソン・チュー・ソン・サオ」―村のくらしと恋』など。

 
第4回 6月14日(日) みんぱく本館展示ツアー 南アジアの染織文化
            講師:上羽陽子[国立民族学博物館・准教授]

会場:国立民族学博物館/定員:30名  お申し込みはこちら


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新しくなった南アジア展示場の「染織の伝統と現代」のコーナー

南アジアの刺繍や染め、織りなどの染織文化は、多様な自然環境からうまれる繊維素材や染材などに支えられてきました。現代のグローバル化においてこれらの染織文化はどのように変容しているのでしょうか。今年3月にリニューアルオープンした南アジア展示場で染織文化の伝統と現代について紹介します。

[img]《講師プロフィール》
専門は民族芸術学、染織研究。インドを中心に南アジアで手仕事の調査をおこなっている。著書に『インド、ラバーリー社会の染織と儀礼―ラクダとともに生きる人びと』、『インド染織の現場つくり手たちに学ぶ(フィールドワーク選書(12))』がある。

 
第5回 6月26日(金) 手仕事のマダガスカル―アマチュア・ナチュラリストの達成
            講師:飯田卓[国立民族学博物館・准教授]

会場:CAFE Lab. グランフロント大阪北館ナレッジキャピタル1F/定員:50名  お申し込みはこちら


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自分のおもちゃを手作りし、改良する子どもたち

世界を見渡してみると、美を求めるがゆえにではなく、工作機械が足りないために、手仕事を余儀なくされている人たちがいます。マダガスカルの村落部にも、そうした人たちが多く暮らしています。彼らはしばしば生産手段の不足を嘆き、手仕事を意味するアサ・ガシ( 字義どおりには「マダガスカルの仕事」) という語に自嘲的な響きをこめます。しかし文化人類学者の目から見ると、身近な素材を見いだす能力や、限られた道具をさまざまに使いこなす技巧、そして道具を発明する才能には、目をみはるものがあります。現地の写真をとおして手仕事の可能性を示します。

[img]《講師プロフィール》
マダガスカル山地部の人と樹木、同海岸部の人と海などの関わりを調査してきた。専門は生態人類学、文化遺産の人類学。著書に『身をもって知る技法』(臨川書店、2014年)、共編著に『マダガスカルを知るための62章』(明石書店、2013年)など。

 
第6回 7月1日(水) メイド イン オセアニア―素材を活かした機能美
            講師:印東道子[国立民族学博物館・教授]

会場:CAFE Lab. グランフロント大阪北館ナレッジキャピタル1F/定員:50名  お申し込みはこちら


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羽毛や木の実で着飾ったポリネシアのダンサー

オセアニアで暮らす人びとは、金属を使わない「石器時代」を数千年ものあいだ生きてきました。道具類やアクセサリーなどは、それぞれの島の自然環境で手に入る材料に工夫をこらして作っていました。単純ながら美的センスにあふれたものや、予想外の素材と用途を組み合わせたものなど、機能美にあふれたものが多く使われていました。オセアニアの人々の知的および美的センスのうかがえる品々を、文化的背景も考えながら紹介します。

[img]《講師プロフィール》
オセアニア考古学・民族学。オセアニアの島々で発掘調査を行い、海洋世界でくらすことを選択した人々の歴史と伝統文化を研究している。主な著書に『南太平洋のサンゴ島を掘る』『オセアニア:暮らしの考古学』など。

 
第7回 7月8日(水) アメリカン・キルトの世界―キルトのある生活、キルティングする人びと
            講師:鈴木七美[国立民族学博物館・教授]

会場:CAFE Lab. グランフロント大阪北館ナレッジキャピタル1F/定員:50名  お申し込みはこちら


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キルティングをするアーミッシュの女性たち(カンザス州ヨーク 2009年)
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アーミッシュ・クリブ・キルト(子ども寝台用キルト)(国立民族学博物館所蔵 米国チェリーヒルにて2011年に収集)

キルトは表布・中綿(布)・裏布を縫い合わせたもので、古来、日用品や防寒具、そして武具として使われてきました。3つの部分を縫い合わせるキルティングは、多くの人々が協力して行う過程であり、この講義では、キルト作りの背景、キルト・パターンの意味、贈り物や募金用などのキルトの用途を検討し、暮らしの中のキルト作りに込められた人々の生き方に迫ります。信教にもとづき、馬車で移動し昔ながらの生活様式を守っているアーミッシュが、無地の服の端切れを繋ぎ合わせて作る独特のパッチワーク・キルトについてもとりあげます。

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メノナイトの友人ローズと2014 ランカスター

《講師プロフィール》
国立民族学博物館研究戦略センター・教授。様々なライフスタイルの提案と実践について、環境と身体の自然の力を問う健康運動、宗教的信念に基づくコミュニティの歴史、高齢者の生活設計からはじまる現代の「エイジ・フレンドリー・コミュニティ運動」などを追っている。