旅・いろいろ地球人
現代に生きる伝統
- (4)ドラムダンス 2016年3月3日刊行
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岸上伸啓(国立民族学博物館教授)
使者祭での踊りの様子=アラスカ州バロー村で2013年2月、筆者撮影アラスカ北西沿岸地域に住む捕鯨民イヌピアットは、捕鯨祭やクリスマスなどの特別な機会にドラムダンスを楽しむ。
このドラムダンスは、一面太鼓をたたく人とそれにあわせて踊る人から成る。通常、10人以上の男たちが椅子に座り、「ヤーヤー」と合いの手を入れながら「ドン、ドン、ドン」と手に持った太鼓を打つ。踊り手たちが太鼓の音に合わせてそれぞれの家族や捕鯨集団、村に伝わる踊りを披露する。
ドラムダンスには、観客の笑いを誘う滑稽(こっけい)な踊りから一糸乱れぬ集団踊りまである。その演目はクジラや渡り鳥など動物の動きをまねた踊り、ハンターが動物を狩る踊り、男女の恋の駆け引きを仕草で見せる踊りなど多種多様である。
イヌピアットは、踊るのも他の人の踊りを見るのも大好きだ。自らの家族や捕鯨集団の踊りに加わることによって、それらへの所属意識を自覚する。また、隣村の踊りを見た人は違いを認識する。それは踊る者や見る者に一体感や仲間意識を生み出し、時には集団間の違いを際立たせたりする。
私はドラムダンスを見るたびに、彼らの伝統への熱い思い、そして伝統が世代を超えて受け継がれていることを実感する。
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