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デジタルで見る衣食住
- (3)家を建てる 2016年9月29日刊行
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丸川雄三(国立民族学博物館准教授)
建材を作る様子。「実業史錦絵絵引」では人物や道具に数字が振られ、役割などが説明されている。今も昔も家を建てるのは大変である。だが実際にはどのような仕事がどれほど必要なのだろうか。それをわかりやすく説明した明治時代の錦絵(にしきえ)が、渋沢栄一記念財団の「実業史錦絵絵引(えびき)」(http://ebiki.jp/)で公開されている。
この中の「衣喰住之内家職幼絵解之図(いしょくじゅうのうちかしょくおさなえときのず)」は、明治の初めに当時の文部省が発行した子ども向けの教材(教育錦絵)である。一軒の木造住宅を建てるにあたって必要な作業が、設計から内装まで、場面ごとに絵入りで解説されている。
全部で20枚の一連の錦絵には、のこぎりや壁塗り用の鏝(こて)などとともに、仕事に取り組む人々の様子が丁寧に描かれている。ウェブサイトでは、これらの道具や人物を、専門家が分析し整理した「絵引データベース」を使って調べることもできる。絵引は民俗学者でもあった渋沢敬三が提唱し実践した考えで、絵巻などに描かれた様々(さまざま)な事柄を字引のようにまとめたものである。
さて、絵引データベースによれば、この家を建てるために絵の中で働く人物は84人であった。衣食住と共にある私たちの日常が、どれほどの人と仕事に支えられているのかがわかる。普段のくらしの背景にある事柄をわかりやすく伝えて行くことが、今後も博物館には求められている。
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