国立民族学博物館(みんぱく)は、博物館をもった文化人類学・民族学の研究所です。

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海洋考古学の世界

(3)トケラウ―環礁での発掘  2020年10月17日刊行

小野林太郎(国立民族学博物館准教授)


アタフ環礁とラグーンの風景。手前は出土遺物を選別する筆者。=トケラウ諸島で2009年、デビッド・アディソン博士撮影

ポリネシアのトケラウ諸島を知っている方はそう多くないだろう。温暖化と海面上昇により沈没の危機にあるツバルの隣にある環礁島群だ。ツバルと同じく海抜約2メートルの環礁島である点も共通する。ただツバルが独立国家であるのに対し、トケラウは距離的には離れているものの、ニュージーランド領の島々。そのせいかツバルと同じ状況ながら、世界的な注目度はまだ低い。

サンゴ礁がドーナツ型に形成されて生まれる環礁島は、その低さや限られえた土壌ゆえ海面変動だけでなく、サイクロンや干ばつの影響を受けやすい極めて脆弱な環境を持つ。そんな島々になぜ人類は移住し、また継続して生存できたのか。そのような問いからアメリカ人の考古学者らと発掘を計画。2009年の夏、サモアから帆船で3日間波に揺られ、トケラウのアタフ環礁に着いた。

ここで約1ヶ月に渡り、発掘や漁労活動の調査を行った。島民にとって重要なタンパク源となる海産物がどのように捕獲・利用され、現在に至るかを調べていった。その結果、島の人々が少なくとも500年以上にわたって、持続的に外洋からラグーン(礁湖)にいたるさまざまな海産資源を利用していたことが明らかになった。こうした島に暮らす人類による生活史の復元も、海洋考古学の重要なテーマの一つである。

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