国立民族学博物館(みんぱく)は、博物館をもった文化人類学・民族学の研究所です。

館員の刊行物

応援の人類学  2020年12月23日刊行

丹羽典生(編)

青弓社
【共同研究成果】

出版物情報

主題・内容

応援とは普遍的現象なのだろうか。日本の大学応援団からスポーツやアイドルファンまで、個別的になされるものから集団を形成する応援まで、それらを比較分析することで応援の文化を多角的に描き出す試み。

おすすめのポイント(読者へのメッセージなど)

応援とは身近な現象である。そしてそうであるがゆえにこれまで研究の題材として捉えられてこなかった。本書では、応援を異文化として捉える最初の試みであり、他の文化における応援を考えるうえでも導きの糸になると考えている。

目次

 

序 章 野次、喝采そして応援――応援の人類学的研究に向けて 丹羽典生

 

1 応援とは
2 応援へのアプローチ――スポーツと芸能を中心に
3 応援という研究領域の開拓に向けて

 

第1章 共感と感情的高揚からみる応援・支援――キリバス人・バナバ人の歌と踊りの事例に基づいて 風間計博

 

1 集団内の「感情的結合」
2 共感と他者理解の人類学
3 キリバス・ダンスが生み出す一体感
4 バナバ人の歌劇が喚起する共感

 

第1部 応援する組織――大学応援団を中心に

 

 

第2章 日本の大学応援団の原型――その変化と組織秩序が示唆する論点を考える 丹羽典生

 

1 応援団の原型と大衆化
2 二〇〇〇年代の応援団への民族誌的接近――関西地区の国公立大学の事例を中心に
3 原型の創出とその変化

 

第3章 日本の大学応援団での女性応援部門の創設と展開――神戸大学応援団を主な事例として 吉田佳世

 

1 大学応援団とは
2 女性応援部門創設以前――応援に参加しない女性部員
3 バトンによる女性応援の登場
4 三部制の確立――一九八〇年代
5 女性部員の役割とその変化

 

第4章 大学応援団の吹奏楽――関西学院大学応援団総部吹奏楽部の事例を中心に 戸田直夫

 

1 関西学院大学での現在の応援形態の確立
2 応援活動の分析
3 吹奏楽部としての活動
4 応援と演奏のはざま――音楽的要素の比較分析

 

第5章 伝統校という歴史空間を構築する応援団――岩手県立盛岡第一高等学校の事例から 瀬戸邦弘

 

1 バンカラ高校と応援団
2 盛岡一高における大運動会
3 ドラマトゥルギーによる通過儀礼

 

第6章 時代を映す鏡としての応援団――ある戦後新設高校の事例から 小河久志

 

1 三高応援団
2 応援団の変化
3 変化をもたらした外的要因

 

第2部 応援する人/される人の関係――スポーツと芸能の場から

 

 

第7章 集合的応援での統制と管理――日本のプロ野球私設応援団の管理をめぐる変遷から 高橋豪仁

 

1 観客の逸脱行動
2 集合的応援行動による観客の統制
3 私設応援団の管理

 

第8章 バンクーバー暴動とは何だったのか――北米プロスポーツリーグのファンダムをめぐって 立川陽仁

 

1 北米のプロスポーツリーグのファンダムとは
2 バンクーバー暴動の実際
3 誰が暴れたのか

 

第9章 応援に表象される参加型スポーツイベントの定着化――長距離トライアスロン大会を例に 山田 亨

 

1 スポーツを消費する――観戦型スポーツと参加型スポーツ
2 参加型スポーツの華やかさと非日常性
3 大会誘致時に着目した応援のかたち
4 応援が示す大会の定着化

 

第10章 演じる見物の諸相――芸能と祭における見物と演者をめぐって 笹原亮二

 

1 違和感の在りか
2 能と見物
3 花祭と見物
4 見物の悪態と褒め詞
5 民俗芸能と見物
6 演じる見物
7 見物と演者の依存関係

 

第11章 アイドルを声援することの系譜学――親衛隊からヲタ芸まで 難波功士

 

1 一九七〇―八〇年代の女性アイドルと親衛隊
2 アイドル冬の時代と応援スタイルの変化
3 ヲタ芸の誕生とアイドルの変容

 

あとがき 丹羽典生