みんぱくのオタカラ
- 中国と銀 2008年2月20日刊行
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野林厚志
銀は中国の歴史においてとても大切な役割を果たしてきました。なかでも秤量貨幣として古くから中国やその周辺地域に流通し、交易をはじめとする経済活動には無くてはならない存在でした。秤量貨幣とは金属を重さで量って貨幣として使用したものです。一方で、西南中国の少数民族の社会では銀製の装飾品を身につける慣習があり、様々な装飾を施した銀製品が作られてきました。例えば、ミャオ族の女性が身につける髪飾り、扇、かんざし、くし、首飾り、胸飾り、イヤリングなどは非常に華やかなことで有名です。こうしたものは多くの場合、民間の職人によって一つ一つ丁寧に作られています。彼らは銀のかたまりを熔かし、装飾品に必要な部分ごとに型を鋳ぬき、それらに彫刻刀を用いて花や龍、鳳凰といった図案を彫りこみ、最後に部品同士を溶接して一つの装飾品に仕上げるという、複雑かつ非常に手間のかかる工程をとります。銀細工の製作に用いられる道具は非常に単純なものですが、職人たちはそれを巧みに使いこなし、精緻に富んだ細工を作り出します。 今回の展示会では、ミャオ族の女性が身につける装飾品を中心に、西南中国の少数民族の人々が作り出した芸術品とよぶにふさわしい銀製品をみなさんにご紹介すると同時に、それらが作られていく過程を現地の取材映像を通じてわかりやすくお伝えしたいと思います。
野林厚志(文化資源研究センター)
◆今月の「オタカラ」
標本番号:新規受け入れのため未定 / 標本名:ミャオ族の頭飾り
※開館30周年記念特別展「深奥的中国―少数民族の暮らしと工芸」にて公開予定◆関連ページ
開館30周年記念特別展「深奥的中国―少数民族の暮らしと工芸」
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