みんぱくのオタカラ
- 木彫「ウヒ」 2007年5月17日刊行
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林勲男
オセアニア先住民の文化運動を組み入れての、常設展示場リニューアルを翌年にひかえ、私は1999年に展示資料収集のため、初めてニュージーランドを訪れた。そしてマオリ人の女性がマネージャーを務める、オークランドのあるギャラリーでこの彫刻に出会った。顔面にイレズミを掘った彫像は、博物館の展示や書物で数多く見ていたが、地となる顔面はなく、女性の下唇とあごにほどこしたイレズミのデザインそのものと、彫った傷口に顔料を埋めていく道具(uhiのひとつ)を組み合わせたものである。その作品の斬新さに、私は強く惹かれた。
制作者のDerek Lardelliは1961年生まれのイレズミの彫り師であり、さまざまなところで「イレズミ(マオリ語ではta moko)芸術家」として紹介されている。伝統的なイレズミの調査や復元にも従事しており、さらには、作曲家、グラフィック・デザイナー、カパ・ハカ(目をむき、舌を出し、足を踏み鳴らし、手で身体を打ち鳴らしながらの伝統的なパフォーマンス)の演技者など、彼は多くの「顔」をもっている。
林勲男(民族社会研究部)
◆今月の「オタカラ」
標本番号:H0217356 / 標本名:木彫「ウヒ」◆関連ページ
本館展示場(オセアニア展示 先住民の文化運動)
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