国立民族学博物館(みんぱく)は、博物館をもった文化人類学・民族学の研究所です。

モノめずらしいくらし(4) ─ 釣り針 ─

異文化を学ぶ

オセアニアには変わった漁法がいくつかあった。その一つが、凧(たこ)をあげてダツを釣る漁法だ。凧をあげるのも変わっているが、糸の先につけるのが釣り針ではなくクモの巣であるところにも驚く。この漁法はじつにユニークで、まず大きな木の葉で作った凧をあげる。凧から海面にたらした糸にはクモの巣をつけ、水面すれすれにはねるように調節する。えさの小魚だと思ってダツがかみつくと、クモの巣が歯に絡まって逃げられなくなるという仕組みだ。

ダツはあごが細長くとがり、口には鋭い歯がびっしり並んでいて突き刺されたら危険な魚である。歯の多さを逆手にとってクモの巣でからめとり、あばれた魚に突き刺されないよう凧で自分との距離をとる。相手の特徴を利用し、しかも遊び心もある漁法に脱帽!

国立民族学博物館 印東道子

毎日新聞夕刊(2005年8月24日)に掲載