国立民族学博物館(みんぱく)は、博物館をもった文化人類学・民族学の研究所です。

グローバルとローカル(8) ─ 英語の国際語化 ─

異文化を学ぶ

英語の国際語としての地位が高まりつつある。その結果、英語のありかたが変わってきている。

かつて英語には規範があった。英語を「話せる」ためには、英米の文化や歴史背景を知り、イエス・ノーがはっきり言え、個としての主張ができることが必須だった。つまり、英語を話す国の文化への同化が求められた。

ところが、英語がさまざまな場面で使われるようになり、いろいろな国の言語や習慣を反映した「方言」が認められ始めた。英語は意思疎通のツールに過ぎず、日本人であれば日本人らしい発音と物腰で話すことが受けいれられるようになってきたのである。英語という単一言語の普及が逆に、文化の多様性を映し出し、受け入れるための器となりつつあるようだ。

国立民族学博物館 菊澤律子

毎日新聞夕刊(2005年11月30日)に掲載