国立民族学博物館(みんぱく)は、博物館をもった文化人類学・民族学の研究所です。

おしゃれにきめる(3) ─ 時を携帯する ─

異文化を学ぶ

腕時計を身に着けない若者が増えている。携帯電話が、音楽を聴き、メールをチェックし、買い物の支払いをし、そして時間を知るための「ケータイ」となったことによる。しかし、腕時計には時を告げるだけでなく、ファッション性もあるはずだ。

毎年訪れるパプアニューギニアの村では、教会や小学校で打ち鳴らす鐘が1日のリズムをつくりだす。そんな村での滞在も終わりに近づくころ、「次に来るとき、腕時計を買ってきてほしい」と、若者にお金を渡されることがある。

高温多湿な環境では、彼らに買うことができる時計は故障しやすいし、いつかはバッテリーも切れる。止まってもかまわない。彼らにとっての腕時計は、ラジオから聞こえてくる「都会」的なものを着飾るアイテムであるからだ。

国立民族学博物館 林 勲男

毎日新聞夕刊(2006年8月16日)に掲載