中国は今(3) ─多文化都市の高齢者ホーム
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将来の住処(すみか)として私がいま一番に思い浮かべるのは、カナダ・トロントの高齢者ホームである。ここ数年、ライフデザイン研究の一環として、さまざまな高齢者の暮らしを追ってきた。高齢者が施設づくりに参加するデンマークの実践も魅力的だったが、ここにはもう一つ刺激的な要素があるのだ。
世界各地からの移住者が暮らすトロントでは、さまざまな「文化」やその「イメージ」を生かした高齢者用施設が工夫されてきた。中国系移民が多く入居する市北部の「イーホン」もその一つ。当初、1世のために故国の雰囲気が豊かで介護や看護を受けられるホームが構想された。若い世代用の集合住宅も隣に建設され、今後、劇場やスポーツ施設も加え人々が行き交う拠点とする計画が進められている。
街づくりの展開も楽しみだが、もう一つ私が注目しているのは、ここに日系の人々向けに25部屋が設けられたことだ。この試みを共に推進してきたのは市東部の日系高齢者住居「モミジ」のメンバーだ。おかげで、人々は中国と日本の料理や季節行事を楽しみ、互いの言葉を覚えつつマージャンをしている。しばしば話題になるのは食べ物や習慣の「違い」だ。文化の「違い」がコミュニケーションを促し、珍しいものも味わいを深める。ホームは核家族を超えたつきあいの場として広がってゆくに違いない。
国立民族学博物館 鈴木七美
世界各地からの移住者が暮らすトロントでは、さまざまな「文化」やその「イメージ」を生かした高齢者用施設が工夫されてきた。中国系移民が多く入居する市北部の「イーホン」もその一つ。当初、1世のために故国の雰囲気が豊かで介護や看護を受けられるホームが構想された。若い世代用の集合住宅も隣に建設され、今後、劇場やスポーツ施設も加え人々が行き交う拠点とする計画が進められている。
街づくりの展開も楽しみだが、もう一つ私が注目しているのは、ここに日系の人々向けに25部屋が設けられたことだ。この試みを共に推進してきたのは市東部の日系高齢者住居「モミジ」のメンバーだ。おかげで、人々は中国と日本の料理や季節行事を楽しみ、互いの言葉を覚えつつマージャンをしている。しばしば話題になるのは食べ物や習慣の「違い」だ。文化の「違い」がコミュニケーションを促し、珍しいものも味わいを深める。ホームは核家族を超えたつきあいの場として広がってゆくに違いない。
国立民族学博物館 鈴木七美
毎日新聞夕刊(2008年2月20日)に掲載