みんぱくのオタカラ
- やきものと地域性 2012年2月17日刊行
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齋藤晃
新しくなったアメリカ展示では、ペルーのチュルカナスのやきものを紹介している。このやきものは1970年代、古代土器の製作技法を再興することで成立した。当初、太平洋の魚や鳥、農作業、舞踏や遊技など、地元の自然や人間の暮らしを表現した装飾モチーフが主流だった。1990年代に収集されたみんぱくの作品もこのスタイルのものが多い。
もっとも、その後チュルカナスのやきものは様変わりしている。政府機関などの支援により、国の輸出振興を支える「旗印の産品」へ変貌したこの工芸品は、地域色を払拭した白黒の幾何学模様を基調とするようになった。観光地のみやげもの屋に並ぶ作品の多くはこのスタイルである。
ただし、地域とのつながりが途絶したわけではない。たとえば、マネノ・フアレスは欧米やアジアでも展覧会を開催している作家だが、出身地のチュルカナスにとどまって、若者にやきものづくりをおしえている。作品も地元の自然から着想を得たものが多い。写真の作品は、みんぱくの展示のために彼が寄贈してくれたものである。地元の伝承では、この鳥にまっすぐ見られた者には幸運が訪れるという。
齋藤晃(先端人類科学研究部准教授)
◆今月の「オタカラ」
標本番号:H0268818 / 標本名:幸運の鳥◆関連ページ
新展示フォーラム「たっぷりアメリカ―春のみんぱくフォーラム2012」(2012年1月7日~3月25日)
新アメリカ展示
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