みんぱくのオタカラ
- インドのパトラ布団 2012年9月14日刊行
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上羽陽子
結婚式に初夜を過ごす寝具として贈られた布団。インド西部のグジャラート州で織られたパトラと呼ばれる絹製の巻衣(サリー)を、布団に仕立て直したものだ。中央のハート形の葉文様や、草花文様、象やオウムの文様が、経緯絣(たてよこかすり)の技術で鮮やかに表現されている。
絣(かすり)とは、あらかじめ表現したい文様を想定して、染めわけた絣糸をつくることからはじめる織技術である。絣糸は、糸の一部分を紐などできつく括ってから染める、刷毛で染料をすり込む、2枚の板で挟んでから染めるなどの技法でつくられる。絣糸がタテ糸のみの経絣、ヨコ糸のみの緯絣、タテ糸とヨコ糸双方の経緯絣がある。絣糸が大幅にずれると、文様が崩れてしまうため、絣糸の染め分けや、織作業での糸の調整に大変手間がかかる。ここで紹介しているグジャラート州産の経緯絣(パトラ)は高度な技術を要し、貴族や王族たちに重宝されてきた。
このパトラ布団は、9月13日からの特別展「世界の織機と織物―織って!みて!織りのカラクリ大発見」で、製作途中の織機とともに展示される。今回の特別展の魅力は、世界各地の織機が、布を織りあげる途中のタテ糸がかかった状態で展示されることである。織機の近くには関連の織物もならぶ。研究者が現地で一緒に収集した織機と織物は、みんぱくでは離ればなれで保管している。織物は衣類収蔵庫と呼ばれる専門の収蔵庫で保管されるからである。今回の特別展では、何十年ぶりに織機と織物が再会するものもある。みなさんも、ぜひ見比べながら、織機と織物の世界を味わっていただきたい。
上羽陽子(文化資源研究センター助教)
◆今月の「オタカラ」
標本番号:H0118972/資料名:インドのパトラ布団◆関連ページ
特別展「世界の織機と織物─織って!みて!織りのカラクリ大発見」(2012年9月13日~11月27日)
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