国立民族学博物館(みんぱく)は、博物館をもった文化人類学・民族学の研究所です。

みんぱっく アラビアンナイトの世界

 
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アラビアンナイトの世界
制作担当教員・西尾哲夫からのメッセージ

みなさんは、アラジンやアリババのお話を知っていますか。ビデオで見たり、本で読んだりしたことがあるという人が多いのではないでしょうか。これらはどちらもアラビアンナイトと呼ばれる長い物語集に入っています。アラビアンナイトは今から1000年ほど前のバグダッド(イラクの首都)で原型が作られたとされています。ですから、アラビアンナイトにはその題名どおりに、アラブをはじめとする中東世界を舞台にしたお話がたくさん入っています。その後、長い時間をかけて現在のような形になりましたが、ヨーロッパに紹介されたのは今から300年前のことです。ヨーロッパに紹介されると、あっという間にベストセラーになりました。明治時代には日本にも紹介されています。

アラビアンナイトが伝えた中東のイメージは、必ずしも正しかったわけではありません。私たちはアラビアンナイトを通して、現実にはあり得ない中東世界のイメージをふくらませてきたともいえるのです。しかしその一方で、アラビアンナイトは中東文化さまざまな側面を教えてくれます。

このパックでは、アラビアンナイトに登場するものを集めてみました。アラジンの物語には、「竜涎香(りゅうぜんこう)の入ったコーヒーを飲んだ」と書いてあります。竜涎香とはどんなものだったのでしょう。自分の目と鼻で確かめてみてください。また、中東世界の子どもたちもアラビアンナイトに親しんでいます。中東世界の子どもたちはどのような暮らしをしているのかがイメージできるように、文房具セットもそろえてみました。日本と似ているところ、違っているところに気づくと思います。文化の違いとはどういうことなのかを考えてみると、おもしろいことがわかってくるのではないでしょうか。

制作担当教員・山中由里子からのメッセージ

アラビアンナイト(千一夜物語)は今から300年ほど前の1704年に、アラビア語からフランス語に初めて翻訳され、ヨーロッパに紹介されました。それ以来、フランス、イギリス、ドイツをはじめとする様々なヨーロッパの国々で、グリムやアンデルセンの童話と同じくらい子どもたちに親しまれてきました。このパックに入っているのは、現在フランスやドイツの本屋さんに並んでいる千一夜物語絵本です。空飛ぶじゅうたんなどのモチーフを取り入れた人気マンガも入っています。

アフリカ大陸の北西部にあるアルジェリア、モロッコ、テュニジア(マグリブ地方)は1950年代までフランスの植民地でした。フランスには、親がマグリブ出身で、アラビア語を話すイスラム教徒の子どもたちが多くいます。おうちで食べるもの、話す言葉、信じている神様が違う子どもたちが学校で仲良くするには、お互いの文化を知る必要があります。子どもたちに親しみのある、アラビアンナイトを通してアラブの歴史や文化を紹介する本も、このパックには入っています。

大きなアラビア語の絵本はカイロで出版されたものです。アラビアンナイトは、生まれ故郷の中東の国の一部では、内容がイスラム教に反するとみなされて、出版が禁止されていたこともありますが、今では子どもの文学としてみなおされています。レバノンの子どもたちがフランス語を習うための読本のテキストにもなっています。

ここに入っている本は外国語のものばかりですが、図書館で日本語訳のアラビアンナイトを探して、ぜひ読んでみてください。

みんぱっくに入っているモノたち
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