みんぱくのオタカラ
- バードカービング 2006年5月19日刊行
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広瀬浩二郎
本物そっくりに見えること。そんなリアルさを追求することから米国でバードカービングが発展した。もともとはネーティブ・アメリカンたちが狩猟用に使ったおとり(デコイ)にルーツを持ち、そこにヨーロッパ系の移民たちの木靴作りの技術などが加わり、アートとしてのバードカービングが生まれた。たしかに、デコイに惑わされる鳥たちのみならず、僕たちも「これって生きてるの?いや剥製かな」と思うほど精巧な木の鳥である。百聞は一見に如かず。まずは遠くから、そして近くからバードカービングをじっくり見てみよう。
さわれないはずの物にさわる楽しさ。日本における野鳥彫刻の第一人者、我孫子市の内山春雄氏は、米国で開かれるバードカービングの世界大会でも活躍する実力の持ち主。その内山さん、最近は見る鳥ではなく、さわる鳥にこだわっている。鳥を見ることができない視覚障害者に野鳥の生態を知ってもらおうという発想からタッチカービングが誕生した。鳥の繊細な足やくちばしには、さわっても壊れないようにピアノ線や金属棒を入れる工夫をしている。
企画展「さわる文字、さわる世界」(9月26日まで開催)では、内山さんが制作した7種類のタッチカービングを展示中である。視覚障害者にも「さわれる」作品というのにとどまらず、すべての来館者が「さわる」喜びを知るための貴重な資料だ。普段は見ることができないシジュウカラの巣箱の中の様子などもジオラマで紹介されている。百聞は一触に如かず。まずは木の感触を味わいつつ、鳥の大きさ、羽や足の細部を指で確認してみよう。次に展示場に設置されたパソコンで鳥の鳴き声と音声解説を聴いて、いきいきした野鳥の世界を想像してみよう。
広瀬浩二郎(民族文化研究部)
◆今月の「オタカラ」
標本番号:新規受け入れのため未定 / 標本名:バードカービング
バードカービング ハクセキレイ
バードカービング スズメ
バードカービング ハシボソガラス◆関連ページ
企画展「さわる文字、さわる世界─触文化が創りだすユニバーサル・ミュージアム」 (2006年3月1日~9月26日)
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