国立民族学博物館(みんぱく)は、博物館をもった文化人類学・民族学の研究所です。

みんぱくのオタカラ

河内音頭・久乃家会〈ひさのやかい〉のギター  2010年7月23日刊行
笹原亮二

毎年夏、大阪の東部から南部の河内地方を中心に、方々に盆踊りのやぐらが立つ。そこで演奏されるのが、「イヤコラセー、ドッコイショ」の囃し詞でお馴染みの河内音頭である。河内音頭では、音頭取りが「紀伊国屋文左衛門」や「河内十人斬り」といった威勢のよい演目を、囃子にのせて歌うともなく語る。現在の演奏スタイルは、戦後、浪曲や歌謡曲などの影響を受けつつ生まれたとされ、囃子には太鼓や三味線とともに、昭和30年代からエレキ・ギターが用いられるようになった。一席数十分に及ぶ間、途切れることなく独特の旋律を奏でるエレキ・ギターは、今や河内音頭には欠かせない存在である。

河内音頭の演奏グループは「~会」と名乗ることが多く、その数は全体で百を越えるという。このギターは、例年8月「流し節」という河内で最古の音頭が河内音頭と共に演奏され、大勢の踊り手で賑わう八尾・常光寺の地蔵盆踊りで、演奏を長年務めてきた久乃家会が用いてきた。久乃家会はかつて、今はなき東京・後楽園球場で皇族列席のもと行われたイベントで河内音頭を演奏した。その際もこのギターが用いられたという、なかなかの由緒来歴を有している。

笹原亮二(民族文化研究部准教授)

◆今月の「オタカラ」
標本番号:H02682444 / 標本名:エレキギター(河内音頭用)

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