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巻頭コラム

梅棹忠夫生誕100年記念企画展「知的生産のフロンティア」  2020年9月1日刊行

飯田卓

この企画展では、民博初代館長だった梅棹忠夫の業績をたどりながら、民博の来しかたと行くすえをふり返る。今年は、梅棹没後すぐに開催された特別展「ウメサオタダオ展」(2011年)から9年、民博開館50周年(2027年)まで7年。梅棹と民博との繋がりを見なおすのに頃合いがよい。フィールドワークで集めたものをことごとく残し、整理・保存・活用してきた梅棹の「知的生産」を、民博が継承して展開するようすをお見せしよう。

 

展示の大方針に据えたのは、「ウメサオタダオ展」で示した梅棹個人の資料を民博が整理してきたようすを伝えることである。展示場では、梅棹が残したノート類やカード、原稿、写真などを大量にデジタル化し、データベースに仕立てあげたものを操作していただける。モニタで閲覧できるアーカイブズ資料の分量は、展示場に出される資料よりもはるかに多い。こうしたデータベースを展示の中心に据えるため、企画展実行委員長の小長谷有紀(元民博教授、現在は日本学術振興会監事)は、国立情報学研究所の高野明彦教授を実行委員に加え、システム開発を依頼した。

 

このデータベースは、過去をふり返るための手段にはとどまらない。これを使えば、梅棹が彼自身の知的生産においてくり返したように、既存資料を並べなおして再分類し、繋がりを発見することで、あらたなアイデアに到達できる。この方法は、梅棹が著した『知的生産の技術』に登場するカードシステムの応用だし、資料も、もともと梅棹が個人的に蓄積したものである。企画展は、それを電子的に共有して大規模なグループの知的生産に繋げる「学び」を提案する。シェアとアクティブ・ラーニングにもとづくあらたな学びの提供は、これからの民博における重要な活動のひとつであり、「博物館は未来をめざす」と語った梅棹の遺志にもかなうことと信じている。

 

飯田卓(国立民族学博物館教授)

 

◆関連写真

モンゴルのフィールドノート
(梅棹忠夫アーカイブズ、写真撮影 尼川匡志)


 

ビルマ独立記念祭での民族衣装
(国立民族学博物館所蔵 X0224006、1961年、写真撮影 梅棹忠夫)


 

フィールドノートから内容別に転記したローマ字カード
(梅棹忠夫アーカイブズ、写真撮影 尼川匡志)


 

◆関連ウェブサイト

梅棹忠夫生誕100年記念企画展「知的生産のフロンティア」