国立民族学博物館(みんぱく)は、博物館をもった文化人類学・民族学の研究所です。

みんぱく映画会

2017年11月5日(日)
火の山のマリア

チラシダウンロード[PDF:4.88MB]

国立民族学博物館では2009年度から、研究者による解説付きの上映会「みんぱくワールドシネマ」を実施しています。9年目の今期からは<人類の未来>をキーワードに、映画上映を展開していきます。今回はグアテマラ・フランス合作「火の山のマリア」を上映します。グアテマラの高地に暮らす17歳のマヤ人のマリアの運命を通して、現代社会における先住民族マヤの問題を知りたいと思います。

  • 日 時:2017年11月5日(日)13:30~16:00(開場13:00)
  • 場 所:国立民族学博物館 講堂
  • 定 員:450名
    ※入場整理券を11:00から講堂前(本館2F)にて配布します。事前申込は不要です。
  • 要展示観覧券(一般 420円)
  • 主 催:国立民族学博物館
 

●開館40周年記念 みんぱくワールドシネマ 映像から考える<人類の未来>
第38回上映会

火の山のマリア IXCANUL/VOLCANO
2015年/グアテマラ・フランス/93分/カクチケル語・スペイン語/日本語字幕付き
【開催日】2017年11月5日(日)13:30~16:00(開場13:00)
【監督・脚本】ハイロ・ブスタマンテ
【主演】マリア・メルセデス・コロイ マリア・テロン
【司会】鈴木紀(国立民族学博物館准教授)
【解説】八杉佳穂(国立民族学博物館名誉教授)
「映画解説」

先スペイン時代より続く伝統に近代化の影が忍び寄る、グアテマラ高地を舞台に、マヤ人の人びとが直面する過酷な現実を、ある母娘の葛藤と揺るぎない愛情をとおしリアルに描く注目作。さまざまな表情を見せる火山のふもとで、農家の娘として成長したマリアは、生活の安定を願う両親の薦めで地主との縁談が着々と進行する中、都会への憧れを捨てられずにいた。行動力溢れる青年に惹かれ、子まで身ごもるマリアだったが、彼はひとりでアメリカに向けて旅立ってしまう。幼少期をグアテマラで過ごし、パリを拠点に活動するハイロ・ブスタマンテ監督は、衝撃的な事件やマヤ人の女性の実体験を基に、脚本を練り上げた本作で長篇デビュー。スペイン語が不得手なハンディが生む弊害や、相次ぐ幼児拉致問題など、マヤ人が迫害される社会の暗部にも鋭く切り込んでいく。自然を畏怖し旧習を貫く母に鼓舞され、理不尽な運命に抵抗を試みる少女の孤高の姿を活写し、ベルリン国際映画祭で銀熊賞に輝くなど国際的に評価された。 (映画評論家 服部香穂里)

変わる社会で変わらぬ生活

グアテマラには、マヤ文明の子孫であるキチェやカクチケルなどのマヤ諸語を話す人が600万人以上いる。彼らは、1524年に征服されて以来、スペイン人やスペイン人とインディヘナの混血であるラディーノに支配されてきた。マヤ人達は、サトウキビやコーヒー農園での低賃金労働やスペイン語ができないための不利益等、ずっと収奪の対象となり、差別を受けてきたが、それでも1980年代に入ると、グアテマラの社会は、グローバル化によって、変化しはじめた。世界の大きな潮流の一つとして、マヤ人の間でも、自分たちの伝統や尊厳を守る運動が盛んになり、「マヤ言語アカデミー」の創設や2言語並立化など、国の制度の一部として実現した。また教育やマスメディアの普及により、知識の均一化が進んでいる。しかし、征服以来続く社会の不均衡は解消されることなく、グローバル化とともに、守るべき母語や村の伝統は失われつつあり、さらに経済活動の活発化によって貧富の差が一層大きくなり、犯罪が多発する社会となっている。カクチケル・マヤ人の日常を切り取ったかのようなできばえのこの作品を通して、現代グアテマラ社会の特徴や問題点を知ることができるだろう。(八杉佳穂)

 
映像から考える<人類の未来>国立民族学博物館 鈴木紀

国立民族学博物館では2016年度より特別研究「現代文明と人類の未来─環境・文化・人間」を開始しました。これは、現代文明の諸課題に対して解決志向型のアプローチをとる研究です。現代文明は物質的な豊かさと普遍的な価値観を広めましたが、同時に環境破壊や文化摩擦を生み出しています。民族学や文化人類学の立場からは、現代文明の矛盾はどのように現れるのか、そしてその解決策は何かを、地域社会や民族文化に視点を据えて考えることが重要です。みんぱくワールドシネマのねらいは、この特別研究の問題意識を来館者の皆様と共有することにあります。世界の映画を通して、現代文明を問い直し、多元的な価値が共存する人類の未来を展望したいと思います。

■お問い合せ先
国立民族学博物館 企画課博物館事業係
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