国立民族学博物館(みんぱく)は、博物館をもった文化人類学・民族学の研究所です。

特別展「世界大風呂敷展」


特別展「世界大風呂敷展 布で包む ものと心」開催期間:2002年10月3日(木)~2003年1月14日(火)

わたしたちがお手伝いします


「風呂敷をつかう体験コーナー」の桂公子さん


特別展示場の2階では、大勢の方がボランティアとしてお手伝いしてくださっています。本日は、そのなかのひとり、桂公子さんにお話しをうかがってきました。桂さんは、「風呂敷をつかう体験コーナー」で、ボランティアスタッフとしてお客さまに風呂敷の包み方をレクチャーされています。

─ この風呂敷展はずいぶん盛況ですね。
平均600人ぐらい来ておられるとうかがっています。これまでの特別展に比べてもお客さまがたくさん来ていらっしゃるということで、ここでお手伝いしているみなさんもとても喜んでおられます。

桂さんの写真 ─ この風呂敷のつかい方の体験コーナーには、たくさんのお客さんが来られますか?
ええ、ずいぶんたくさん来られます。普通、こういうワークショップというのは、ちょっと眺めて通りすぎるだけの方が多いんですけど、今回の風呂敷展の場合は、通りすがりの方は必ず入って、体験して行かれるという感じです。それだけ風呂敷というのは、身近で魅力のあるものなんだな、って思います。

─ 桂さんの場合、一日にどれくらいの方のお相手をされるんですか。
多い時は、5、60人というときもありますよ。修学旅行で来られたりして、集団で見ていただいたこともあります(笑)。

─ 桂さんご自身は、もともと風呂敷に興味がおありだったんですか?
いえ(笑)、実はもう、この特別展があるまで、風呂敷というものには自分でもあまり触ったことがないくらいだったんです。この風呂敷展がはじまる前に、先生方にいろいろと教えていただいたり、宮井株式会社の方々からも包み方を教えていただいたりして、とても興味を持つようになりました。わたしたちも勉強させていただいております。

─ この風呂敷展のボランティアのきっかけはどのようなことだったのですか?
わたくしの場合は、博物館友の会の会員になっておりまして、3年くらい前に、こういう特別展のときのボランティアを募集しますというご案内をいただいたのがきっかけです。それから、ボランティアに参加させていただくようになりました。

─ お仕事は毎日来られているんですか?
ここでお手伝いしているほとんどのみなさん、週に1回とか、仕事を持っていらっしゃる方もいますし、そのくらいの頻度だと思います。10時半から4時半まで、ここでお客さまのお相手をさせていただいております。

─ 桂さんご自身、これからも、こうした特別展でボランティアをされる可能性はあるわけですね。
はい。みなさんもそうだと思いますが、いろいろな特別展が企画されますけれども、その都度、わたくしも参加していきたいと思います。

─ 博物館の展示にこうしたかたちで関わるというのは、どのようにお考えですか?
その特別展それぞれのテーマがありますよね。その都度、いろんなことが催されます。展示会にお客さんとして入って見るだけでなく、ボランティアとして参加することで、展示のテーマを深く勉強することができますし、こういうワークショップでいろんな方に接することができます。それがとても楽しみです。

─ ボランティアのみなさんも特展の舞台裏を支えていらっしゃるわけですが、、、
そうですね。特別展ができるだけたくさんの方に見ていただけるような魅力あるものになるために、これからもお手伝いできればと思います。

丁寧な教え方がとても印象的な桂さん。わたしも、風呂敷の包み方を教えてもらいました\(~o~)/
桂さんが担当されているこのコーナーでは、不思議な(?)風呂敷の包み方が体験できます。もっとも、本来は不思議でもなんでもなくて、昔は大勢の人が知っていたんでしょうけれど、風呂敷に限らず布一枚あればこんな意外な包み方もあるのか!!とあらためて驚くこと間違いなしです。ぜひご体験ください。


「風呂敷をつくる体験コーナー」の谷口幸一さん


特別展2階には、色鮮やかなさをりに囲まれたなごやかな雰囲気のなかでさをり織りを体験できるコーナーがあります。このコーナーで、お客さんにさをりの織り方を教えてくださるのが、手織り工房・福祉作業所 アトリエゆうハウスのみなさんです。今回は、谷口幸一さんにいろいろなお話しを聞きました。

─ 谷口さんは、お仕事はなにをされているのですか?
え~と、作業所で、知的障害を持ったみんなと一緒にさをりを織って、それを商品にしていろんなところで販売しています。

アトリエゆうのみなさん─ この風呂敷展での活動にはいつから参加されているんですか?
風呂敷展がオープンしてから関わっています。

─ アトリエのメンバーの方は、毎日、何人くらいここに来られているんですか?
平日で3人くらいですね。で、土日になると、4、5名来てます。

─ 特別展に来るお客さんには、メンバーのみなさんとここで一緒にさをりを織ってもらって、さをりの織り方を体験してもらうというかたちですね。
そうですね。アトリエのメンバーのみんなが先生というか、体験されに来られたお客さんに織り方を教えてあげています。

【写真はアトリエゆうハウスのみなさん(後列・谷口幸一さん、前列左から松村一男さん、折田克子さん、井本早苗さん)】

─ ここで実際に体験されていく方は、一日でどれくらいいるんですか?
だいたいですけど、平均で10人くらいでしょうか。これまで一番多い日で、33名くらいの方が織っていかれましたね。

─ ここで織ったものは、その織った方がいただいていく、ということですね。
はい、持って帰ってもらっています。

─ ここに教えに来ていただいている方は、普段は同じ場所で生活されているんですか?
いえ、アトリエゆうハウスという吹田市の泉町にある作業所に家から通って来て、みんなで仕事をしています。とても楽しく過ごしています。

─ さをり織りという織物とアトリエのみなさんの活動は、どうゆうきっかけで結びついたんですか?
そうですね、みんなね、あの、自分を表現するっていうことにすごい優れているというか、とても上手なんです。そして、さをりというのは本当に自分の織りたいように織れる、糸も、自分の好きに選んだ糸を何色でも使っていい。余った糸などもどうやって織り込んでいってもいいと。そういうようなところにアトリエのみんなはひかれるようですね。なんて言うんですかねぇ、規制されない自由な表現というか、ぼくたちの発想を超えているいろんな織り方をするんですよ。そういう意味では、さをり織りはとてもいいですね。

─ 谷口さんご自身にとってさをり織りはどういうものなんですか、どのようにしてはじめられたんですか?
やっぱり、織るのもすごい楽しいですし、自分のその日の感情も織り方に出るんですよ。それもすごい楽しいことなんですけど、やっぱり、みんなとワイワイ話しながら、いろんな人と話しながらできる、それに、さをりを介していろんな人と知り合ったり。そいうのが楽しくてさをりを続けてきました。

─ ここで実際に体験されたお客さんの反応はいかがですか?
みなさん、すごい楽しんで織って帰られますよ。ちょうど30センチくらい織ったところから調子が出てくるんですね、それでみなさん「え~もう終わり?」っていう感じで(笑)、「もうちょっと織りたい」みたいな感じで。でもすごく楽しんで、アトリエのみんなとの会話も楽しんで帰られます。

─ この風呂敷展でこうした活動をしてみていかがですか?
みんな、どうしてもやっぱり、おもてに出る機会っていうのが少ないんです。それで、今回こういう場でいろんな方と触れ合うことができて、よかったです。みんなしゃべるのもとても上手になったというかね。「社会性」じゃないですけれども、高くなってきたというか。うん、みんなすごい変化してますよ、ぼくたちを含めてですけどね、それは。


─ じゃあ、今後も、こういう活動は続けていかれるんですか。
そうですね。いろんなイヴェントに参加させていただきたいと思います。

─ アトリエゆうハウスでは、いろんな芸術活動をされているんですか?
はい。おもにやっているのはさをりなんですけど、絵も描きますし、陶芸もします。

─ アトリエのみなさんは多芸でいらっしゃる。
そうですね。ひとりひとりはみんなすごい力を持ってるんですよ。自分を表現したりすることとか。でも、それが閉じ込められたままで、表現する場所がなかなかなかったりとか、機会がなかったりとかいうので、埋もれていっちゃうことがすごく多いんですよ。さをりだと、自分を出せるんですけどね。ぼくらのアトリエでもとてもいい作品ができても、じゃあつぎにそれをどう活かしていけばいいのか、っていうのが、ぼくたちがこれからがんばっていかなければいけないところだな、と感じますね。

─ アトリエハウスのみなさんは、今回の活動についてどのようにおっしゃってますか?
楽しいと言ってます。毎日毎日、いろんな方が来て、いろんな会話ができてね、みんなも、まぁ疲れたりしてますけども(笑)、でもね、みんな楽しいと言ってます。

さをりの体験コーナー、とっても楽しそうです。でも、30センチはやっぱり短すぎ? 堺から来られたというあるお客さんも、60センチぐらい織らな満足でけへん、とおっしゃってました。自分で織ったさをりをなにに使おうかな、と考えるだけでワクワクしますね。谷口さんがおっしゃるように、自由に自分を表現できるのがさをりです。みなさんも自分を表現してみませんか。そして、谷口さん、ゆうハウスのみなさん、どうもありがとうございました。