国立民族学博物館(みんぱく)は、博物館をもった文化人類学・民族学の研究所です。

企画展「さわる文字、さわる世界─触文化が創りだすユニバーサル・ミュージアム」

 
展示の紹介
【日本における点字以前の盲人用文字】
 フランスで点字が考案されたのが1825年、それが日本点字に翻案されたのが1890年。点字は簡便に読み書きできる究極の触覚文字ですが、それ以前にも世界各地でユニークな「さわる文字」が使用されていました。本企画展では、符号文字として、むすび文字、折紙文字、通心玉を、凸起文字として、紙撚文字、松脂文字、ろう盤文字、瓦文字、木刻漆塗文字、木刻凸凹文字などを紹介します。また、凸文字で書かれた新約聖書、音楽や鍼灸の教科書も展示します。これがほんとうに読めるのか!? 便利かつ不便な「さわる文字」を目と指で読んでみましょう(京都府立盲学校、筑波大学附属盲学校所蔵の資料より)。
印字用具『葛原勾当日記』と木活字
 江戸末から明治にかけて活躍した盲人筝曲家・葛原勾当(1812~1882)は、自ら木活字を考案し、1837年から40余年間、独力で日記を書き続けました。各活字の側面には触覚で区別できる印が入っています(菅茶山記念館寄託、広島県指定重要文化財)。レプリカにより、触覚を使って日記を書く擬似体験ができます。
 
【想像力と創造力を刺激する触感ワールド】
 本企画展では「さわっておもしろい物」をたくさん集めました。盲学校で使われていた教具として、富士山の模型、凸型京町図、凸型地球儀、さらに算木やさまざまな算盤を陳列します。ふれ愛観音像、神社の模型、浮き出し絵画、そして7種類のバードカービング。さわらなければわからないこと、さわって知る物の材質や温度など。触覚の力をゆっくり引き出してみましょう。
ふれ愛観音ふれ愛観音
 仏像彫刻、修理の第一人者で愛宕念仏寺の先代住職・西村公朝さん(故人)が制作。目の不自由な人がさわって心で拝める仏像がないことに対する疑問と怒りから、やさしさとあたたかさをテーマに作られました。
 
神社の模型神社の模型
 千葉県茂原市の大工・清水政和さんが制作。ヒバ材を用い、斗組などの技法を駆使した「本物志向」のミニ神社。木に愛着心を持つ職人魂が伝わってきます。
 
バードカービングバードカービング
 千葉県我孫子市の野鳥彫刻家・内山春雄さんが制作。内山さんは、野鳥そっくりに木を彫って彩色する「バードカービング」の第一人者。今回は手で触れて楽しむ7種類の「タッチカービング」を展示しています。付属のCDで鳥の鳴き声も聞けます(写真はハシボソガラス)。
 
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※本企画展においてケースに入っていない展示品は、自由にさわることができる物です。
※企画展見学(触学)前には、かならず手を洗い、さわるマナーを守りましょう。