国立民族学博物館(みんぱく)は、博物館をもった文化人類学・民族学の研究所です。

みんぱく世界の旅

パプアニューギニア(2) 『毎日小学生新聞』掲載 2015年7月4日刊行
林勲男(国立民族学博物館准教授)

海岸の温泉でゆで卵づくりをする子どもたち
火山と共存するラバウルの人々

パプアニューギニアの島の一つに、ニューブリテン島があります。この島の北の端には、およそ1500年前の噴火でできたシンプソン湾があり、湾岸にはラバウルという町があります。そして、このラバウルのすぐ近くには、火山が今でも活発に活動しています。1994年、タヴルヴル山とバルカン山の二つの火山がほぼ同時に噴火しました。その結果、ラバウルから人々は避難し、一時は誰も住まなくなってしまいました。

いまも町に残る火山灰


火山観測所から見たラバウルの町とダブルブル火山

やがて噴火は収まり、人々は次第にもどってきました。商店も再開し、町の中央の公園では、市場も開かれています。しかし、町の3分の1は、降り積もった火山灰におおわれたままです。飛行場もあったのですが、飛行機が離着陸できなくなってしまったため、シンプソン湾の南にある別の町に新しい空港が作られました。閉鎖されてしまったホテルもあります。

日本では火山の近くには、観光客が訪れる博物館や温泉などの施設が作られています。でもラバウルでは、火山が活発な活動を続けているため、いつまた大きな噴火が起きるかわかりません。シンプソン湾自体が、大きなカルデラで、その周りに火口が並んでいるのです。以前のように大勢の人が住み、多くの買い物客や観光客が訪れる、活気ある町にいつもどれるかわかりません。それでも、人々は火山と共存していく道を選びました。


太平洋戦争の時には、日本軍の基地がありました
 

一口メモ

火山活動が大きいと、地下にある熱くとけたマグマが大量に出てきて、マグマがあった部分がへこみます。そこをカルデラといいます。噴火する火口とは別で、火口よりも大きいです。

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