国立民族学博物館(みんぱく)は、博物館をもった文化人類学・民族学の研究所です。

みんぱく世界の旅

民族音楽(2) 『毎日小学生新聞』掲載 2015年8月1日刊行
寺田吉孝(国立民族学博物館教授)
西アジアから広がるチャルメラ

ネパールのチャルメラは管が曲がっています。

チャルメラという楽器を知っていますか。最近では生の音を聞く機会はなくなりましたが、少し前までは、夜がふけると、この楽器の少し悲しげなメロディーが聞こえてきました。ラーメンの屋台が近づいてくる合図です。

元々この楽器は西アジア(現在のイランのあたり)で生まれ、そこから世界各地に広がったと考えられています。日本には二つの経路で紹介されました。


キリスト教のお祭りで演奏されるチャルメラ

東のルートでは、インド、中国を通って、東南アジアや朝鮮半島に伝えられました。日本には、交易を許されていた中国人たちによって17世紀始めまでに伝えられました。西のルートでは、バルカン半島を通ってヨーロッパに伝えられ、オーボエの祖先になりました。ヨーロッパ人が植民地でキリスト教を広めるためにチャルメラを使ったといわれています。

名前はポルトガル 形は中国

日本でも、16世紀末にポルトガル人宣教師たちが、この楽器を演奏したという記録が残っています。チャルメラの名前はポルトガルの楽器シャラメラからきていますが、楽器の形は中国のチャルメラに似ています。中国から伝わった楽器にポルトガルの名前がつけられたなんて不思議ですね。

チャルメラは、日本ではラーメン屋台の音として知られていますが、他の国では、さまざまな場面や目的で演奏されます。神や仏がいることを音で表すためにお寺や教会で演奏されたり、人を勇気づけるために軍隊の音楽やスポーツの伴奏として使われてきました。


チャルメラを作るインドの職人

しかし、チャルメラに一番関係が深いのはなんといっても結婚式です。インド、中国、トルコなどでは、チャルメラがないと結婚式ができないと考える地域がたくさんあります。

 

一口メモ

リコーダーを演奏する時、息つぎをしますね。チャルメラの演奏者は、口の中の空気をはきながら、同時に鼻から空気を吸って演奏します。こうすれば長い間演奏しても音が途切れません。

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