みんぱく世界の旅
- イタリア(2) 『毎日小学生新聞』掲載 2015年8月29日刊行
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宇田川妙子(国立民族学博物館准教授)
伝統的な農業や食材を大事に
おじいさんのブドウ園でワインてづくりの手伝いをする子ども=ローマ近郊でイタリアの気候は、温暖な地中海性気候です。ローマの緯度はほぼ青森市と同じですが、年間平均気温は東京と同じくらい。しかし、降水量は日本よりかなり少なく、しかも雨が降るのは主に冬で、夏は乾燥しています。
農業のサイクル
人々の生活は、この気候のもとではぐくまれてきた農業のリズムと関係しています。農業の中心は、パンやパスタの原料となる小麦です。小麦は日本の稲作とちがって、秋の終わりに種まきをします。雨が多い冬になると農作業はいったん中断します。冬はクリスマスやカーニバルなどの祭りの季節でもあり、多くはキリスト教の信仰にかかわるものですが、寒くて暗い時期の娯楽にもなっています。
そして春、復活祭のころに農業も再開し、夏に入ると小麦が収穫され、秋にはブドウの収穫、ワインづくりなどが続きます。その後、収穫祭などで一休みしてから麦作の準備に入り、また冬を迎えます。
現在、農家の数は少なくなっていますが、町々の周囲にはブドウ畑が広がり、自家用のワインつくっている人はめずらしくありません。都会に暮らす子どもたちも、そうした親戚の家に行き、ブドウの収穫などを体験しています。最近では、地元の伝統的な農業や食材を保護しようとするスローフードという動きや、農業体験などを観光に取り入れたアグリツーリズムも盛んです。学校給食でも、地元の食材や料理が積極的に使われ、地域の文化や環境を理解し、大事にしていこうとする取り組みが進んでいます。
10月初旬に行われるブドウ祭り
青空市場。野菜はほぼすべて量り売りです一口メモ
どの町でも週ごとに青空市場が開かれます。地元でとれた新鮮な野菜や肉などが手に入るので、買い物客が多く集まります。
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