国立民族学博物館(みんぱく)は、博物館をもった文化人類学・民族学の研究所です。

みんぱく世界の旅

中国(2) 『毎日小学生新聞』掲載 2016年4月16日刊行
卯田宗平(国立民族学博物館准教授)
春はカワウの産卵時期

毎年3月から5月の3か月間、親鳥を小屋のなかで飼育します。親鳥はここで産卵し続けます。

中国のウ飼い漁師たちは自分たちではんしょくさせたカワウを漁で利用します。なかには、自宅で育てたウ飼い用のカワウを各地に売り歩く漁師もいます。今回、紹介する江蘇省の張さんもカワウを育て、それを売り歩く漁師のひとりです。

カワウは毎年3月から5月にかけて卵を産みます。張さんは、春になると5組の親鳥を一組ずつ小屋のなかで飼育します。小屋のなかには巣があり、親鳥はそこで2、3日に1個のペースで卵を産み続けます。

毎朝、張さんは巣のなかに卵がないか確認します。卵をみつけるとすぐに巣から取りだし、となりの小屋にいるメスに抱かせます。卵を巣から取りだすことで、カワウの親鳥に産んだはずの卵がなくなったことを気づかせ、さらに卵を産ませます。メスにだかれたカワウの卵はおよそ28日後にふ化します。


すりつぶした魚肉を竹棒にのせて、ヒナの口のなかに流しこみます。

ヒナが誕生すると、張さんはいそがしくなります。同じ時期に生まれた数十羽のヒナに1日3回以上、えさをあたえなければならないからです。張さんは、すりつぶしたフナの魚肉を竹棒の先端にのせ、1羽ずつ口のなかに流しこみます。朝のえさやり作業をすべて終えると、昼のえさやりの準備に取りかかります。張さんは、こうして3カ月の間に150羽前後のヒナを育てます。

張さんは体重が1500グラム前後にまで成長したヒナを20羽ほどひとつのかごに入れ、それを持って各地に売り歩きます。販売先まで遠いときは、バスや電車を乗りついで3日以上もかかります。


ヒナを各地に運ぶためのかご。ひとつのかごにヒナを20羽ぐらい入れます。
 

一口メモ

日本では、茨城県日立市十王町の海岸でつかまえた野生のウミウを飼いならし、ウ飼いに利用しています。

シリーズの他のコラムを読む
中国(1)
中国(2)
中国(3)
中国(4)