国立民族学博物館(みんぱく)は、博物館をもった文化人類学・民族学の研究所です。

みんぱく世界の旅

ベトナム(4) 『毎日小学生新聞』掲載 2016年5月28日刊行
樫永真佐夫(国立民族学博物館教授)
ニワトリがアヒルのお母さん!?

家の軒先で、ニワトリにまじってえさをついばむアヒル

ベトナムの黒タイ出身の人が、日本に行ったみやげ話をしてくれました。東京に行ったら、池をアヒルの親子が泳いでいて、とてもおどろいたというのです。
 アヒルの親子が泳いでいたって、みなさん、あたりまえだと思いますよね。でも、それがあたりまえでないのです。どういうことでしょうか。

村ではいろんな家畜を飼っていて、アヒルも例外ではありません。しかし、おもしろいことに、アヒルが卵を産むと、村人はニワトリにアヒルの卵をあたためさせるのです。すると、生まれたアヒルの子たちは、自分を卵からかえしてくれたニワトリがお母さんだと信じて育ちます。アヒルの子たちは、ニワトリのヒヨコたちにまじり、ニワトリのお母さんに一生懸命くっついて歩きながら大きくなるのです。だから、村のアヒルは親子でいっしょにいることはないんですよ。


水辺から家族につれられて帰宅するおとなのアヒル

でも、ヒヨコは泳げませんが、アヒルは泳ぎたいですよね。ですから、親ばなれするころになると、アヒルの子をヒヨコたちからひきはなします。それからは、飼い主の家族の子どもが、アヒルたちだけをかごに入れてつれていき、川や池や田んぼの水に放し、迷子にならないよう見張りをするようになります。今度は人間の子どもがお母さんのかわりになるんですね。こうやって、村の子どもたちは、動物たちとのかかわり方、いのちの大切さをひとりでに学んでいくのでしょう。


アヒルを川に放し、見張りをする黒タイの少女
 

一口メモ

黒タイの村ではたくさんの動物を飼っています。農耕用の水牛、食用のブタ、ニワトリ、アヒル、ヤギ、牛、運搬用の馬などです。

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