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みんぱく世界の旅

東南アジアの仏教(3) 『毎日小学生新聞』掲載 2016年9月10日刊行
平井京之介(国立民族学博物館教授)
規則を守り清く正しい生活

僧になった私がラオスで食べていたもの

東南アジアの僧は227項目もある規則を守りながら集団生活をし、仏教の教えを学びます。
まず、髪の毛と眉毛をそります。着物は夏でも冬でも、一枚の布だけ。これを人前で脱ぐことは許されず、夏は暑くて冬は寒くて、結構大変です。
意外かもしれませんが、僧はなにを食べてもよく、肉も食べます。ただし、自分で食事を作ることは禁じられています。毎朝、鉄製の鉢を抱えて近くの村々をはだしで歩き、人びとに恵んでもらったものを持ち帰って食べます。食べることが許されるのはお昼の12時まで。夕方にはおなかが減って、夜中にはグーグーなってしまいます。

許されない罪と許してもらえる罪

絶対に許されない重大な罪が四つあります。生き物の命を奪う▽盗みをはたらく▽うそをつく▽女性と親しい関係になる――。これらの罪をおかすと、お寺を追い出され、僧をやめなければなりません。
許してもらえる罪にはちょっと不思議なものもあります。悪口をいう▽お金にさわる▽お酒を飲む▽時計をする▽女性に触れる――。女性に触れると修行の成果がゼロに戻ってしまうので、街で人混みを歩くときなど、僧はかなり苦労します。
規則を守ることは、仏教の教えを学ぶための準備になると考えられ、清く正しい生活をしながら、経典を読んで仏教の教えを学びます。あぐらを組んで座り、目をつむって呼吸を整え、自分のこれまでの生活を反省すると、人生の苦しみから逃れ、平和な暮らしができると、東南アジアの仏教は教えています。

 

一口メモ

日本では多くの僧が結婚しています。女性に触れることも禁じられている東南アジアの僧がこの話を聞くと、とてもびっくりします。

シリーズの他のコラムを読む
東南アジアの仏教(1)
東南アジアの仏教(2)
東南アジアの仏教(3)
東南アジアの仏教(4)