国立民族学博物館(みんぱく)は、博物館をもった文化人類学・民族学の研究所です。

みんぱく世界の旅

インドのラクダ(3) 『毎日小学生新聞』掲載 2016年12月3日刊行
上羽陽子(国立民族学博物館准教授)
ラクダの毛で作る道具

ラクダ飼いがラクダのこぶのまわりの毛を刈り取っています

インドの牧畜民、ラバーリーの人たちは、暖かくなると年に1回、ラクダの毛を刈り取ります。これは体についた虫やホコリ、汚れなどを毛と一緒に取り除いて、ラクダを健康にするためです。ラクダを座らせ、男性たちは、はさみを使って模様を刈り込んでいきます。ラクダ飼いに尋ねると「どうせ刈り取るなら模様があったほうがよい」といいます。


毛をジグザグ模様に刈り込みます

刈り取った毛は、木の棒でたたいて、ホコリやごみを取り除き、その辺にころがっている石を使って糸にします。ラクダ飼いは、ラクダと一緒に歩いて移動し、その時間や休憩のおしゃべりの時間などいつでも糸をつくっています。糸づくりは時間がかかるのです。

 
毛→糸→ひも→袋

ラクダの毛を撚り合わせたひもを使って袋を織ります

糸がたまると、それらを撚り合せて、ひもつくります。群れからはぐれやすい子ラクダの首に鈴を付けるときや、夜眠るときに言うことをきかない子ラクダの後ろ脚を縛るためにもひもは必要です。

また、ひもで袋を作ります。移動するラクダ飼いの持ち物はとても少なく、みなさんのランドセルよりも小さい袋に、ラクダ飼いはミルクに入れる茶葉、ミルクを飲むための器、葉タバコなど身の回りのものすべてを入れます。

さらに大事なものとして、乳当て袋も作り、お母さんラクダの乳房にかぶせます。この袋がないと、ラクダ飼いの飲むミルクはすべて子ラクダに飲まれてしまいます。

このように、ラクダの毛は牧畜をするために必要ないくつもの道具を生みだすのです。

 

一口メモ

ラクダの毛は部分によって柔らかさが違います。生まれたての子ラクダのこぶのまわりが最も柔らかくふわふわとしています。

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