国立民族学博物館(みんぱく)は、博物館をもった文化人類学・民族学の研究所です。

みんぱく世界の旅

エチオピア(4) 『毎日小学生新聞』掲載 2017年1月7日刊行
川瀬慈(国立民族学博物館助教)
登校前に家のお手伝い

エチオピア北部の高原

エチオピアの農家の朝は早いです。北部の高原の農家の子どもたちは、まだ日が昇る前にニワトリの鳴き声にせきたてられ、ヤギの毛皮の敷物「アゴザ」の上で起き上がります。

まず、家の横にある木の柵から牛たちを出し、付近の放牧地まで連れて行きます。女の子たちは井戸に水くみに行きます。学校から帰ると、家の周りで乾いた牛のふん「エベット」を拾い集めます。これは、草木とともに、調理用の燃料として利用されます。また、家屋の材料としても活用されます。

 

牛を放牧中の子どもたち

放牧を任された子どもは、ただ黙って牛たちを眺めていれば良いというわけではありません。群れからはみ出ようとする牛には、口笛や「ドゥラ」と呼ばれる木の棒を使って群れに戻すようにします。また、牛の肌が傷つかない程度の加減で小石を投げつけ牛の進行方向をコントロールすることもあります。牛がプラスチック製品やビニール袋などのゴミをのみ込んで窒息したり、毒草を間違えて食べたりしないよう、注意深く見張る必要もあります。家畜泥棒だっているので油断できません。

 
雨季の放牧

雨が降ったらビニールをかぶります

6月から9月にかけての雨季には、高原に断続的に激しい雨が降ります。子どもたちは、頭に背丈ほどのビニールシートを器用に巻いて、放牧に行きます。激しい雨が降ってきたら、このビニールシートで全身を包み、かがんだ体勢で、雨が通り過ぎるまで辛抱強く待ちます。とっても便利です。

 

一口メモ

放牧中、子どもたちは「ワシント」と呼ばれる、木製のたて笛を吹くことがあります。この笛の演奏で、農作物を食べる鳥たちを追い払うこともあります。

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