国立民族学博物館(みんぱく)は、博物館をもった文化人類学・民族学の研究所です。

みんぱく世界の旅

ボリビア・アマゾン(1) 『毎日小学生新聞』掲載 2017年2月11日刊行
齋藤晃(国立民族学博物館教授)
雨期は水の世界

雨期の村。増水した川がすぐ近くまで迫っています

ボリビアは南アメリカ大陸の中央に位置しています。日本ではアンデス高地の国として知られています。観光地として人気のウユニ塩湖や民族音楽のフォルクローレが演奏される地域は、いずれも高地にあります。

しかし、実のところ、ボリビアの国土の3分の2は熱帯低地です。南アメリカ大陸の西から東にかけて、世界有数の大河であるアマゾン川が流れていますが、その流域はボリビアにも及んでいます。そこでは、高温多湿な気候のもと、森林と草原が広がり、無数の川が蛇行しています。


乾期の平原。蛇行する川の岸辺には木が生い茂り、その先には草原が広がっています

乾期と雨期があり、乾期は5月~9月、雨期は10月~4月です。雨期には大量の雨が降ります。高地に降り注いだ雨水も低地に流れ込み、雨期の盛りには川の水があふれ出し、土地の6割以上が水没します。乾期には青々とした草原だったところが巨大な湖になります。道路も水没し、乾期には車で通行できたところを、雨期にはカヌーをこいで渡ります。


雨期の平原はすっかり水没しています。草をかき分けながらカヌーで進むのは一苦労です

アマゾンで暮らす人びとは、小高い丘のうえに村を建設します。ただし、土地の起伏がとぼしいため、雨がたくさん降ると、村の多くが水没してしまいます。水害の被害者は、親戚や友人を頼ってよその土地に移住するしかありませんでした。しかし近年では、政府や民間団体の支援により、高床式の家が建てられるようになりました。その場合、村は水没しても、個々の家は浸水を免れます。村人たちは、水の世界と化した村のなかで、カヌーをこいで家を行き来します。

 

一口メモ

ボリビアは南半球にあるので、日本が冬の真っ盛りのとき、いちばん暑い時期を迎えます。雨がもっとも多いのもそのときです。

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