国立民族学博物館(みんぱく)は、博物館をもった文化人類学・民族学の研究所です。

館員の刊行物

民族文化資源とポリティクス――中国南部地域の分析から  2016年3月30日刊行
塚田誠之 編 風響社
【共同研究成果】

出版物情報

主題・内容

中国は多民族国家で、諸民族集団の文化は資源化され続けてきた。その資源化の過程において、政府、知識人、企業、一般民等の諸主体がせめぎあい、あるいは妥協・協働してきた。本書は、現代の中国、とくに南部に居住する民族に焦点をあてて、諸主体がいかに関与し、文化がどのように保存・発展・利用され資源化されているのか、またそこにいかなるポリティクスが働いているのか、生態文化、年中行事、観光化、歴史の諸方面から検討した。

おすすめのポイント(読者へのメッセージなど)

中国諸民族の文化の資源化とポリティクスに関わる諸問題について、最新の調査にもとづいて明らかにした。

目次

●第一部 生態文化、民俗知識とポリティクス
<森林>の資源化と精霊祭祀のゆくえ――西双版納における「生態文化」のポリティクス(長谷川清)
中国貴州省における生態博物館の二0年(曽士才)
ハニ族と雲南イ族における薬草知識をめぐるポリティクス――ABS法と非物質文化遺産(稲村務)
●第二部 年中行事とポリティクス
キン族の伝統文化の資源化とその影響──中国広西チワン族自治区東興市万尾村の哈節を例として(廖国一)
羌年の観光資源化をめぐるポリティクス――四川省阿壩蔵族羌族州汶川県の直台村と阿爾村の羌年を事例として(松岡正子)
祖先祭祀をめぐるミクロな資源化――珠江デルタの水上居民を例に(長沼さやか)
文化の資源化と宗教――中国ラフ族の「葫蘆文化」論をめぐって(片岡樹)
●第三部 文化資源をめぐる諸主体と文化資源との関係
国境地域における観光の現状と問題――徳天跨国瀑布観光の事例から(塚田誠之)
ベトナムにおける民族文化の資源化と観光開発──マイチャウとソンラーにおけるターイの事例から(樫永真佐夫)
棚田の文化資源化とその再資源化をめぐるポリティクス──中国雲南省元陽県を例として(孫潔)
項羽の歴史記憶の資源化と観光開発(韓敏)
●第四部 「歴史」とポリティクス
文化資源としての戦跡――旅順の事例を中心に(高山陽子)
現代中国における文化資源としての族譜とその活用(瀬川昌久)
イ族史叙述にみる「歴史」とその資源化(野本敬)
歴史の資源化と歴史意識――雲南省徳宏州の「果占璧王国」論をめぐって(長谷千代子)