館員の刊行物
- 「ぞめき」の時空間と如来教 近世後期の救済論的転回 2020年8月10日刊行
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石原和(著)
法藏館
出版物情報
- 出版社:法藏館 出版社ホームページはこちら
- 定価:4,500円(税抜)
- ISBN:9784831862648
- 判型:A5判
- 頁数:370頁
主題・内容
救済論が質的に大転回した1800年頃、民衆宗教の先駆けといわれる如来教が名古屋で誕生する。熱狂とともに信仰にむきあっていたぞめきの時空間を民衆宗教、民間宗教、真宗教義の枠を超えて捉える初の試み。
おすすめのポイント(読者へのメッセージなど)
本書で取り上げる如来教の救済論には、近世後期の大きな社会変動の中で、利己主義的な動向や共同体の崩壊が進み、また度重なる災禍に遭い、それまでの「普通」崩れ去っていく過程において、人々が現世での生に必至に向き合ってきた軌跡がみられます。この社会状況は2020年の世界とも重なることがあり、当時の人々の「ぞめき」に耳を傾けることは、コロナ後の世界を生きていくヒントとなると考えています。また本書の対象とした宗教空間について、「民衆宗教の世界観を歩く」『月刊みんぱく』(2018年6月号)でも取り上げていますので、あわせてご確認ください。
目次
序章
はじめに――「ぞめき」の時空間と如来教――一 民衆宗教研究・如来教研究とその課題二 近世民衆宗教としての如来教三 本書の立場と分析視点・方法四 本書の構成第一部 一八〇〇年前後の救済課題と如来教
第一章 一八〇〇年前後における救済の動揺――三業惑乱と如来教――
はじめに――異安心の時代と如来教――一 近世真宗教学論争年表からみる如来教の時代二 三業惑乱――近世真宗最大の異安心事件――三 つとめの方法への問いと如来教おわりに――三業惑乱にみる時代的課題と共振する如来教――第二章 名古屋城下の真宗異安心と如来教――尾州五人男をめぐって――
はじめに――名古屋城下の真宗から如来教説教を読む――一 名古屋城下の真宗二 名古屋城下における真宗信仰の揺れ――「新敷宗意」事件と尾州五人男事件――三 如来教説教と真宗の動向おわりに――一八〇〇年前後の救済課題に対する心の定置という応答と如来教――第三章 「渇仰の貴賤」と如来教――作善実践に向き合う――
はじめに――「渇仰の貴賤」の群像から如来教説教を読む――一 『金明録』にみる「渇仰の貴賤」二 作善問題と善の実践根拠三 作善問題と如来教――善/悪と救済――おわりに――一八〇〇年前後の人々の救済への希求と宗教の応答――第二部 一八〇〇年前後名古屋の宗教環境と如来教世界の形成
第一章 如来教世界の形成過程と秋葉信仰
はじめに――名古屋城下の宗教環境と如来教における存在意義の発見――一 名古屋城下の秋葉信仰――その登場と展開――二 鳴海宿下郷家と秋葉講――その組織と信仰活動――三 秋葉信仰に対峙した如来教説教の展開おわりに――他信仰との柔軟な対峙のあり方と民衆宗教・如来教の展開――第二章 如来教説教の想像力としての近世親鸞伝
はじめに――一八〇〇年前後の宗教知と如来教説教――一 枕石寺の宝物弘通と「高祖親鸞聖人御枕石」二 如来教の中の「高祖親鸞聖人御枕石」縁起三 如来教の「高祖親鸞聖人御枕石」縁起の想像力おわりに第三章 文政地震と如来教
はじめに――非日常に表出する民衆宗教の特徴――一 名古屋城下における文政地震二 地震の恐怖と宗教三 如来教の地震説教とその展開おわりに――即時性・即興力・変容――結章 本書の成果と課題・展望
一 一八〇〇年前後の都市名古屋二 「ぞめき」の時空間とつとめの方法の模索――社会変化へのふたつの対応――三 一八〇〇年前後の救済パラダイムという視線を広げる四 救済論の構成にみる如来教の特色初出一覧
あとがき