国立民族学博物館(みんぱく)は、博物館をもった文化人類学・民族学の研究所です。

民族学者の仕事場:Vol.4 近藤雅樹―栴檀(せんだん)は双葉(ふたば)より芳(かんば)し

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栴檀(せんだん)は双葉(ふたば)より芳(かんば)し
─ イラストにしろ、実測図にしろ、とにかく、お上手なんですが、近藤さんのお父さんは機械製図のお仕事をやっておられたんですよね。
近藤 はい。工作機械を作るための機械を設計する仕事をしていました。
─ え? なんの機械?
近藤 機械を作る機械。日産やトヨタが、新しいエンジンを開発するために必要になる旋盤だとか、穴をあけるボール盤とかです。新しい機種が開発されるときには、そのつど新しい工作機械が必要になる。普通の工作機械を汎用機、そうでないのを専用機っていうんですけどね、そういう専用機の設計を頼まれていました。
─ そうなんですか。
機械製図の例
近藤 ええ。父は、内燃機関学科の出身でした。だからエンジンつくりなんですね。ホント、機械屋さんで、ずっと、そういう設計図ばっかり・・・。それで、ぼくが10歳になったころから、ぼくに機械製図を仕込みはじめたんです、跡をつがせようとして・・・。
─ で、実際に描き出したんですか?
近藤 機械全体の組み立て図を見て、その中から一つの部品を取り出して、その図を描く。逆に、部品図を集めて全体の組み立て図を作る。
─ 部品図というのがまずあって、それで組み立てる・・・。
近藤 要するに図面の読み取り方ということを、小学生のころに教え込まれたんです。
 
※機械製図の例〈『JISハンドブック 1984』日本規格協会〉より
─ それは、プラモデルの組み立てみたいなことですか。
近藤 もっと複雑です(笑)。だけど、基本的にはそういうことです。
─ じゃあ、プラモデルとかも、得意だったわけですか。
近藤 それには指先の器用さも必要ですけどね(笑)。ま、でも、たくさん作りましたよ。
─ 大学では、また、機械じゃないけど、民具の図面にかかわることになった。
近藤 はい。そのときに機械製図を仕込まれていたことが非常に役に立ちました。モノの構造を理解するうえでね。
─ そうでしょうね。
近藤 「アラマキの作り方」もそうだったんですが、作業工程も図解するようにしました。普通、報告書といえば文章にしますよね。でも、読んでもイメージがわきにくい。だから、作業の流れをあらわすときにも、できるだけ図解するようにしたんです。
─ やっぱり、こういう作業は基本ですよね。写真を撮ったってわからないからねえ。
近藤 図解の処理の仕方次第で、長々と文章を書くよりも一目瞭然になる。そういうやり方で調査報告書をつくるということを、徹底してやってきたんです。

 
【目次】
千里ニュータウンと地域の農具美大でおぼえた民具の図解神聖視される酒造の道具描いているうちに、絵よりモノのほうがおもしろくなったイラストレーター時代民具の最初の現地調査栴檀は双葉より芳し民具とはなにか?空き缶も民具になる母から娘へ伝えられる「おんな紋」モノがもつ魂博物館で展示企画にあたる「人魚のミイラ」――標本資料の真贋少女たちの霊的体験の研究「人はなぜおまじないが好き」海外の日本民具を調査近代日本のへんな発明 ─『ぐうたらテクノロジー』*(参考資料)さまざまな画法*