民族学者の仕事場:Vol.4 近藤雅樹―博物館で展示企画にあたる
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博物館で展示企画にあたる
─ 兵庫県立歴史博物館に就職されたのはいつですか。
近藤 1980年の8月、まだ準備室の段階でした。
─ 博物館がオープンしてから妖怪の展覧会をされた。それが、近藤さんが最初に企画されたものだったんですか。
近藤 いいえ。
─ そうじゃない。
※特別展『お化け・妖怪・幽霊・・・』
兵庫県立歴史博物館 1987年
近藤 最初は、県内の文化財を公開するような企画をいくつか。「淡路人形展」ですとか「兵庫の絵馬」とかといった、おとなしいのをやっていたんですけど・・・。
─ 就職されて、はじめのころは、しばらくのあいだは収集ですか。
近藤 はい。それから、県内の文化財調査も。展示企画も次々こなしました。年間7本しないといけませんでしたからね。それを9人の学芸員が手分けしてやりました。だから、毎年2本か、3本あたりました。なんだか、矢継ぎ早にやっている感じでしたね。
─ その中で、いつでしたか、特別展で「お化け・妖怪・幽霊・・・」というのを企画された。いつですか。
近藤 1987年ですね。
─ 大成功だったらしいですね。それがきっかけになって、お化けとか、妖怪とか、そちらの研究もすることになるわけですよね。この特別展の関連で『図説日本の妖怪』(河出書房新社 1990年)という本ができたわけですよね。
※『図説日本の妖怪』近藤雅樹 編
河出書房新社 1990年
近藤 展覧会図録を増補した感じの本でしたね。民博に着任してすぐのことだったから、名刺代わりの本になって、当時の館長だった梅棹忠夫先生から「おばけの先生」というあだ名をいただきました(笑)。
─ その後「大妖怪展」の監修もされましたよね。これがそのときの図録ですね。タイトルも『大妖怪展』(朝日新聞社 2000年)なんだ。
近藤 朝日新聞社大阪本社が企画して、福岡県立博物館と岐阜市立博物館、それから、神戸と京都の大丸百貨店を巡回しました。
─ 『ねがい・うらない・おまじない』(淡交社 2000年)も、展覧会をされたときのものですね。
近藤 ええ、こちらは茨城県立歴史館からたのまれて・・・。あのですね、博物館というところは、資料の真贋(しんがん)をすごく気にしますよね。
※『大妖怪展』朝日新聞社 2000年
─ 本物か、偽物か、ということですね。
近藤 そうです。妖怪展を企画していると、つくりものの「人魚のミイラ」だとか、あるいは「鬼のしゃれこうべ」などというものが、調査の中でいくつも引っかかってきましてね。で、こうしたつくりものは、博物館の標本資料として考えた場合には、本物なのか偽物なのかと。博物館の資料としてみたときに、資料価値があるのか、ないのか・・・。
─ なるほど。
※『ねがい・うらない・おまじない』
監修 近藤雅樹 淡交社 2000年
- 【目次】
- 千里ニュータウンと地域の農具|美大でおぼえた民具の図解|神聖視される酒造の道具|描いているうちに、絵よりモノのほうがおもしろくなった|イラストレーター時代|民具の最初の現地調査|栴檀は双葉より芳し|民具とはなにか?空き缶も民具になる|母から娘へ伝えられる「おんな紋」|モノがもつ魂|博物館で展示企画にあたる|「人魚のミイラ」――標本資料の真贋|少女たちの霊的体験の研究|「人はなぜおまじないが好き」|海外の日本民具を調査|近代日本のへんな発明 ─『ぐうたらテクノロジー』|*(参考資料)さまざまな画法*